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局地戦闘機 『閃電』/三菱
Mitsubishi J4M

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十七試局地戦闘機閃電 双支持架推進式形態
全 長 13.000m
全 幅 12.500m
全 高 3.500m
主翼面積 22.000㎡
最大重量 4,400kg
航続距離 2時間20分
発動機
馬力
空冷複列星型18気筒「ハ43 四一型」(三菱)
2,200馬力
最大速度 759km/h
武 装 20mm機関砲 2門
30mm機関砲 1門
30kg爆弾 2発
符 号 J4M
連 コードネーム Luke(ルーク)※情報流出による命名
製 造 三菱
設計者 佐野栄太郎
created by Rinker
ミクロミル
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完全新機体への挑戦 誕生することなく中止

昭和14年/1939年から計画に入り、昭和15年/1940年から本格的に開発が始まった、局地戦闘機【雷電】
それに引き続き、海軍は次の局地戦闘機の開発を三菱に指示します。
今回の局地戦闘機の大きな目玉は、速度も然ることながら、超強力な武装で相手を潰すという点にありました。

搭載機銃は30mm機銃一挺と20mm機銃二挺。
多くの戦闘機は7.7mm機銃や20mm機銃の組み合わせでしたが、後継機となる【十七試局地戦闘機】(のちの【試製閃電】)では、さらに大口径の30mm機銃を搭載させることで、一撃必殺を狙ったのです。
30mm機銃は100発の弾倉、20mm機銃も200発以上の弾倉が備わっており、まず撃ち負けることは考えられない重武装でした。
加えて軽量ではありますが、30kg爆弾(60kg爆弾?)が2個搭載できることも求められています。

速度は高度8,000mにおいて750km/hを目標とし、これは大戦末期に開発が進んでいた【震電】と同じ程の速度です。
当然達成されれば、十分過ぎる高速性を保つことができます。
また、上昇力も高度8,000m到達までに10~15分と、超馬力を発揮する必要がありました。

またしても難題に直面した三菱でしたが、三菱は臆することなく新しい挑戦をこの機体で取り組むことにしたのです。
それは「双支持架推進式形態」という形態でした。

まずは参考画像を見ていただきましょう。

フランス シュド・ウェスト製 「SO8000」

形状としては、【十七試局地戦闘機】はこのような形です。
プロペラが機体のお尻についています。
これは推進式という方式で、従来の牽引式(機体の先頭にプロペラがついているメジャーなタイプです)よりも速度が稼げるというメリットがありました。
プロペラに関わらず、一般的には引っ張るよりも押すほうが力が伝わります。
また、推進式にすると武装を機体の前部に集中させることができ、特に局地戦闘機の場合は基本的に追い回す側に入りますから、全門を効率よく機首側に配置できるのは十分なメリットでした。

ただ、このレシプロ推進式の機体は世界各国でも研究がなされていましたが、なかなか実用化されていないのが実情でした。
エンジン冷却の困難さが最大の問題だったのです。

エンジンは当然高性能になればなるほどエネルギー量が増えますから、単純に造れば熱量がかさ増しされていきます。
なのでエンジンの燃料消費効率を上げたり、冷却性を高めて機体とエンジンを守ったりします。
三菱はこのエンジン冷却のために空気取込口をコックピット後部とプロペラ前の二箇所に用意。
その空気が胴体を一周するようにして、冷却用の空気が機体全体に行き渡るようにしました。
時間はかかりましたが、実験用の機体を風洞実験にかけた結果、この構造で十分冷却能力が保たれることが実証され、推進式の問題がほぼ解消されました。

エンジンは陸上戦闘機用として開発されていた「ハ43-21型」を改造した「ハ43-41型」を搭載することになります。
しかしせっかく冷却性が保たれても、このエンジンの開発がなかなか進みません。
なにせ重量だけでも【雷電】より1t上回っています。
加えて速度が2割増しですから、比較になりません。

さらに、「双支持架推進式形態」の問題として残っていたのが、この2本の尾翼の振動です。
これは推進式ならではの問題ではなく、単純に2本の尾翼の振動が収まらないということです。
牽引式プロペラでも、双支持架形態だと同じ問題はつきまといます。

この尾翼、推進式のプロペラが生み出す気流に干渉してしまうため、当初は主翼よりも高い位置に設置されていました。
ところが実験が進むに連れて、この問題があまり解消されていないことが発覚。
結局尾翼の位置を単に上げた程度では、2,200馬力のエンジンが生み出す推進力を受け流すことができなかったのです。
他の機体同様、この振動という厄介な問題は一朝一夕で解決できるような簡単なものではありません。
尾翼の強度を上げれば、機体バランスが崩れ、それを解消するために胴体の構造を見直されることになり、また実験をして細かく修整をしていくのです。
この時点で昭和19年/1944年。
開発に4年も費やしていました。
戦局的にも、余裕は露ほども残されていませんでした。

一方、海軍では推進式での戦闘機開発が本機以外にも始まっており、その筆頭として空技廠が開発中の【震電】の開発が順調に進んでいました。
戦況の悪化、【震電】の台頭、そして機種削減・統合の煽りを受けた【試製閃電】は、結局4年の開発期間を経たにもかかわらず、昭和19年/1944年10月、試作機すら製造されることなく開発の中止が決定されました。

この【試製閃電】以外でも、結局「双支持架推進式形態」は世界を見渡しても非常に困難な挑戦だったようで、例で掲載しております【シュド・ウェストSO8000】も失敗作となっています。


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