広告

【伊十六型潜水艦】(巡潜丙型)
【submarine I-16 class(Jun sen TypeHei)】

記事内に広告が含まれています。

基準排水量2,184t
水中排水量3,561t
一番艦竣工日伊号第十六潜水艦
昭和15年/1940年3月30日
同型艦5隻
全 長109.30m
最大幅9.10m
主 機艦本式2号10型ディーゼル 2基2軸
最大速度水上 23.6ノット
水中 8.0ノット
航続距離水上 16ノット:14,000海里
水中 3ノット:60海里
馬 力水上 12,000馬力
水中 2,000馬力

装 備 一 覧

備 砲40口径14cm単装砲 1基1門
25mm連装機銃 1基2挺
魚雷/その他兵装艦首:53cm魚雷発射管 8門
搭載魚雷 20本
22号対水上電探 1基
広告

雷撃特化の丙型は前型の色濃く 九軍神の出撃を見送る

「巡潜甲型」が戦隊旗艦型、「巡潜乙型」が戦隊編成型となり、さて「巡潜丙型」はどうかというわけですが、「乙型」と同じく戦隊編成型です。
しかし「丙型」はある種最も潜水艦らしいというか、潜水艦という言葉で思い浮かべるものそのものでした。
ただ、その名前に異議あり、どちらかというと「丙型」「巡潜四型」という表現に近い存在です。

まず、「甲、乙型」との最大の違いとして、航空兵装がないことが挙げられます。
「巡潜」「一型」【伊5】以降、全ての潜水艦がカタパルトと水上機を搭載していましたが、やがて潜水艦任務に就ける水上機とパイロットに余裕がないことが浮き彫りとなってきます。
戦争をするといっても日本は別に盤石な体制がとれていたわけではなく、こと潜水艦に至っては明らかに勢力不足でした。
そしてパイロットも飛行機も大変貴重なのですが、その貴重な人材、資材を潜水艦に割り振れる状態ではなくなっていたのです。

それに伴い、「巡潜」の超航続距離と並ぶ目玉である航空兵装を外し、より潜水艦らしく雷撃力を高めた設計とすることにしたのです。
「乙型」が6門17本に対して、「丙型」は8門20本に強化されました。
この「丙型」の艦首8門20本はともに日本建造の潜水艦の雷撃兵装としては最大で、これに並んでいるのは「潜特型」のみです。
ただし、日本潜水艦に編入されたドイツの【U511(呂500)、U1224(呂501)】は搭載魚雷22本、【U181(伊501)、U862(伊502)】は24本と日本よりも多い潜水艦も存在します。

このように雷撃特化型となった「丙型」ですが、その設計は「乙型」から航空関連装備を外したわけではありません。
「丙型」の設計元になったのは「乙型」ではなく「巡潜三型」で、「甲、乙型」とは逆に類似点が少ない存在なのです。
これは建造計画から逆算すると「乙型」の設計をさらにあれこれいじっている暇はなく、まだ簡略化が早い「巡潜三型」を流用することで建造を急いだという理由があります。
「巡潜四型」と書いたのはこのためです。
しかし機関は「甲、乙型」で採用されている最新の艦本式2号10型ディーゼルを採用しています。
あとでこれの生産効率が悪い故に機関を換装した「乙型改一」が誕生するわけですが、この時点ではまだこの問題に気付いていなかったのでしょう。

「丙型」はまず「マル3計画」で5隻の建造が決定し、この5隻は全て太平洋戦争の開戦前に竣工。
さらに「マル急計画」で3隻の追加建造が行われましたが、これらの誕生は昭和19年/1944年とかなり遅く、苦しい戦いを強いられました。
「マル3」組と「マル急」組は細部で若干の変更があったりしますが、同型艦ととらえて問題ありません。
ちなみに「改マル5計画」では40隻もの「丙型」建造計画があったようですが、「改マル5計画」は戦況変化のスピードには到底追いつけず、「丙型」としてはこの8隻限り、続く「丙型改」もたった3隻と寂しいものでした。

「マル3」組の5隻は全て竣工時から甲標的の搭載が可能で、この甲標的を以ってして「真珠湾攻撃」で奇襲を仕掛けるという作戦の当事者でした。
5隻全て沈没(撃沈もしくは自沈)、9人戦死1人捕虜という結果に終わったわけですが、この9人の戦死者は特別攻撃隊の偉勲として「九軍神」と奉られました。
なお、この時の特攻は今日一般的に言われる戦死必定の特攻ではなく、そして甲標的もまた「回天」とは違って特攻兵器ではないことを念のため添えさせていただきます。

その後5隻は多くの通商破壊作戦で戦果を上げており、また甲標的などの輸送任務、戦争末期には「回天」搭載任務も任されるなど何でもこなしています。
残念ながら生存艦は【伊47】1隻のみ。
【伊47】は搭載した「回天」での初戦果を挙げた潜水艦で、アメリカの【給油艦 ミシシネワ】を仕留めることに成功。
給油艦故に燃料に引火した後は手が付けられず、炎上沈没していきました。
【伊20】が撃沈数8隻と、【伊165】と並んで日本潜水艦撃沈数第5位となっています。

同 型 艦

伊号第十六潜水艦伊号第十八潜水艦伊号第二十潜水艦
伊号第二十二潜水艦伊号第二十四潜水艦伊号第四十六潜水艦
伊号第四十七潜水艦伊号第四十八潜水艦