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クラ湾夜戦/クラ湾海戦

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クラ湾夜戦 クラ湾海戦

戦闘参加戦力

大日本帝国 連合国
第三水雷戦隊(司令官:秋山輝男少将) 第36.1任務部隊
 旗艦:駆逐艦【新月】 (指揮官:ウォルデン・L・エーンスワース少将)
 駆逐艦【谷風】  軽巡洋艦【ホノルル】
 駆逐艦【涼風】  軽巡洋艦【ヘレナ】
・第一輸送隊  軽巡洋艦【セントルイス】
 第三十駆逐隊  駆逐艦【ニコラス】
  駆逐艦【望月】  駆逐艦【ジェンキンス】
  駆逐艦【三日月】  駆逐艦【オバノン】
  駆逐艦【浜風】  駆逐艦【ラドフォード】
・第二輸送隊  
 第十一駆逐隊  
  駆逐艦【天霧】  
  駆逐艦【初雪】  
 第二十二駆逐隊  
  駆逐艦【長月】  
  駆逐艦【皐月】  
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防空駆逐艦、夜戦で散る かろうじて一定数の輸送に成功

1942年12月10日、アメリカは第67任務部隊司令にヴォルデン・L・エーンスワース少将を据える。
12月1日に行われた「ルンガ沖夜戦」で、第67任務部隊は格下の駆逐艦群に夜戦によって重巡1隻沈没、3隻大破という屈辱的大敗を喫し、立て直しが急務となっていた。
第67任務部隊は軽巡洋艦を中心とした艦隊に再編制され、第67任務部隊は日本艦隊の排除のために再びギアを上げた。

1943年3月、第67任務部隊は第36任務部隊へと名を改められる。
それからすぐの3月5~6日、同海域で行動をともにする第68任務部隊が「ビラ・スタンモーア夜戦」において【村雨】【峯雲】を撃沈させる。
数の利も大いにあったが、夜戦において日本に何もさせずに完勝を手にした大きな要因はレーダーであり、以後日本は事あるごとにレーダーによって海戦の優位性を奪われていくことになる。
この時まだ夜戦は日本に絶対有利であると言うことが日本はおろかアメリカでも認識されていて(現に「ルンガ沖夜戦」の惨劇がある)、「ビラ・スタンモーア夜戦」はその認識を揺るがす重要な海戦だった。

また、3月には日本も「い号作戦」を発令して空襲によるアメリカ軍基地の壊滅を狙ったが、すでに迎撃機や防空設備が整っていたアメリカ軍に見事に跳ね返されてしまい、貴重な戦闘機と搭乗員を多く失うことになる。

ガダルカナル島を放棄した日本に対し、アメリカはこの流れを止めるまいと追撃を開始。
日本はガダルカナル島失陥後の要所であるニュージョージア島の守備を固めていったが、その一方で目と鼻の先にあるレンドバ島への支援はおろそかだった。
アメリカはニュージョージア島から10kmしか離れていないレンドバ島をすぐさま制圧し、ここから陸上砲台や艦砲射撃でいつでもニュージョージア島のムンダ飛行場を砲撃できる体勢を整えた。

しかしニュージョージア島で日本は奮戦、ジャングルに紛れてゲリラ戦を仕掛け、アメリカは想定外の苦戦を強いられた。
そんな中、日本は6月29日にアメリカのレンドバ島への輸送艦隊を発見し、日本は第三水雷戦隊にこの輸送船団の撃滅を指示した。
この時旗艦は【川内】ではなく【新月】が務めている。
【新月、望月、皐月、夕凪】の4隻と、別働隊として【天霧、初雪、長月、三日月、水無月】がレンドバ島周辺に進出した。
だがスコールがアメリカの輸送船団を覆い隠して日本はこれを妨害することができなかった。
続いて7月2日には再び【夕張】を加えた2つの艦隊で輸送船団を求めて出撃したが、この時も空振りに終わり、レンドバ島に艦砲射撃をお見舞いして帰投した。

レンドバ島へ続々とアメリカ軍が上陸していることから、日本はニュージョージア島の放棄を視野に入れるとともに、すぐそばにあるコロンバンガラ島の重要性が急速に上がっていることに気づく。
ニュージョージア島への増員、また撤兵の起点はこのコロンバンガラ島と、北に位置するチョイスル島になるからである。
日本は急遽コロンバンガラ島への増員を決定し、陸軍1,300人と兵器を7月4日、5日に送り込むことになった。

7月4日16時40分、第三水雷戦隊【新月、長月、皐月、夕凪】がブインを出撃。
チョイスル島を経由してニュージョージア海峡を縦断、コロンバンガラ島まで一気に南下する航路をとった。
22時40分、クラ湾に進入しつつある時に【新月】は左舷前方10kmで島に向けて火砲を放っている一団を発見。
第36.1任務部隊が輸送を行う一方で、ニュージョージア島に向けて艦砲射撃を行っているところだった。

艦砲射撃中の駆逐艦部隊の一員だった【バッグレイ級駆逐艦 ラルフ・タルボット】は、突如反応があったレーダーを確認。
北方に複数の探ありとのことだった。
しかし【新月】らにとって幸いなことに、第36.1任務部隊が踵を返すことはなかった。
率いていた第二十二駆逐隊司令金山国三大佐は、まずは先制攻撃をして距離を開けるとし、22時25分、魚雷の射程内に入ると【長月】6本、【新月、夕凪】4本の魚雷を発射して一度退避した。

このうちの1本が、見事艦砲射撃中の【フレッチャー級駆逐艦 ストロング】に命中。
さらに陸上からの砲撃も3発命中し【ストロング】は大破。
【フレッチャー級駆逐艦 シャヴァリア】によって多くの乗員は救助されたが、最終的には機雷に誘爆して【ストロング】は沈没した。
日本は機を見てコロンバンガラ島への輸送を行ったが、結局時間のかかる兵器や物資の揚陸は断念された。

中途半端な成果となった7月4日の輸送を受け、7月5日の輸送は一層強化されることとなった。
しかし本来第三水雷戦隊の将旗は【夕張】に翻るはずだったが、ショートランド泊地に入る際に触雷してしまい任務遂行不可と判断。
旗艦は再び【新月】が務めることになった。
航路は7月4日と変わらず、チョイスル島からコロンバンガラ島まで一直線である。

対する第36.1任務部隊は、ツラギまで戻って給油を行っていた。
しかし今度は明確に「東京急行発進」の報告があり、第36.1任務部隊は迎撃体制を取るために急ぎツラギを出発した。
【ストロング】【シャヴァリア】の代わりには【フレッチャー級駆逐艦 ジェンキンス】【フレッチャー級駆逐艦 ラドフォード】が編制された。
レーダーで先制攻撃を仕掛けたあと、乱れた陣形に駆逐艦で突入する作戦であった。

23時3分、【新月】は米艦隊を発見し、一度Uターンで距離を開けた。
その後23時48分に第二輸送隊を分離させたが、その直前の43分には【ブルックリン級軽巡洋艦 ホノルル】もレーダーで東京急行を発見していた。
相手が巡洋艦3隻、駆逐艦4隻という強力な編制であることがわかると、【新月】は52分に第二輸送隊を再び呼び戻し、全軍でこれを迎え撃つように覚悟を決めた。

しかし56分から開始された砲撃戦は、最も大型の【新月】に集中した。
夥しい砲弾が降り注ぐ【新月】はまたたく間に火炎に包まれ、たった10分で火だるまとなった挙げ句、そのままズブズブと沈んでいってしまった。

支援隊の【谷風、涼風】は砲弾が飛んでこないこの瞬間をチャンスとし、57分にそれぞれ8本の魚雷を発射。
【新月】が炎上する中、2隻は次発装填のために戦場から距離をおいた。
【天霧】【初雪】も魚雷と砲撃で支援隊を援護したが、逆に【初雪】は反撃を受けて輸送に専念するために撤退している。

日付変わって7月6日0時2分、【谷風・涼風】が放った魚雷が【セントルイス級軽巡洋艦 ヘレナ】の艦首に1本、艦中央部に2本直撃。
近い場所に2本の魚雷を受けて無事な巡洋艦はそうそういない、【ヘレナ】は真っ二つに避けて一気に沈没した。
しかし【谷風】【涼風】も魚雷発射後の離脱時に砲撃を受けていて、【涼風】は第一砲塔が沈黙、【谷風】も不発ではあったが被弾している。
加えて【谷風】は次発装填装置の故障のため、支援隊2隻の戦場への再突入が遅れてしまった。
結局再突入は離脱から約1時間後の午前2時となり、その頃には【新月】の姿はおろか敵影もなく、海戦は終結していた。

一方本命の輸送であるが、こちらも必ずしも順調とは言えなかった。
特に【長月】が座礁したのは大きな損失で、揚陸と同時に【長月】の離礁の作業も行われたが、結局夜明けとともに空襲の危険から【長月】の放棄が決定された。
さらに揚陸を終えた【初雪、天霧】【ヘレナ】救助中だった【フレッチャー級駆逐艦 ニコラス】【ラドフォード】から砲撃を受けたこともあり、揚陸作業中の緊張は全くほぐれることはなかった。
この時放った【天霧】の魚雷は【ラドフォード】をわずかにかすめている。

最終的な戦果としては、日本は2隻の駆逐艦と第三水雷戦隊司令部壊滅という大きな犠牲を払って、搭載量の約半数の揚陸となり、満足のいく成果とは言いがたかった。
【谷風】は戦闘詳報で敵軍のレーダーを侮るなかれと強く主張し、いよいよレーダーの驚異が海軍に押し迫ってくる恐怖を察している。

コロンバンガラ島への輸送は引き続き緊急を要する事項となり、日本もこの損害に臆することなく輸送作戦を実施。
そして7月9日の輸送完遂を経て、7月12日、第二水雷戦隊旗艦【神通】を頭領として「コロンバンガラ島沖海戦」が勃発するのである。

日本の辛勝

両者損害

大日本帝国 連合国
沈 没
【新月】 【ヘレナ】
【長月】  
中 破
【谷風】  
【天霧】  
【初雪】  
小 破
【涼風】  
【望月】  
1943年海 戦
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※1 当HPは全て敬称略としております(氏をつけるとテンポが悪いので)。

※2 各項に表記している参考文献は当方が把握しているものに限ります。
参考文献、引用文献などの情報を取りまとめる前にHPが肥大化したため、各項ごとにそれらを明記することができなくなってしまいました。
勝手ながら今は各項の参考文献、引用文献をすべて【参考書籍・サイト】にてまとめております。
ご理解くださいますようお願いいたします。