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親潮【陽炎型駆逐艦 四番艦】

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起工日 昭和13年/1938年3月29日
進水日 昭和13年/1938年11月29日
竣工日 昭和15年/1940年8月20日
退役日
(沈没)
昭和18年/1943年5月8日
ブラケット水道
建 造 舞鶴海軍工廠
基準排水量 2,033t
垂線間長 111.00m
全 幅 10.80m
最大速度 35.0ノット
航続距離 18ノット:5,000海里
馬 力 52,000馬力
主 砲 50口径12.7cm連装砲 3基6門
魚 雷 61cm四連装魚雷発射管 2基8門
次発装填装置
機 銃 25mm連装機銃 2基4挺
缶・主機 ロ号艦本式ボイラー 3基
艦本式ギアード・タービン 2基2軸
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ルンガの大勝に貢献も、多くは輸送で力を発揮した親潮

【親潮】【黒潮】【早潮】【夏潮】とともに第十五駆逐隊を編制し、第二水雷戦隊に所属して太平洋戦争を迎えました。
開戦と同時に「ダバオ、ホロ攻略」に参加、以後「メナド攻略作戦、ケンダリー攻略作戦、マカッサル攻略作戦」と次々に任務をこなしていきました。
しかし「マカッサル攻略作戦」中の2月9日、輸送任務中に【夏潮】【米S級潜水艦 S-37】の雷撃によって損傷。
【黒潮】が曳航しようと試みますが波浪の影響などもあって敢えなく沈没してしまい、第十五駆逐隊は早くも3隻運用となってしまいました。

その後も「クーパン攻略作戦、ジャワ南東機動作戦」などに参加し、【親潮】は多忙な日々を送り続けます。
3月には【加賀】を、5月には【翔鶴】を呉まで送り届け、6月の「ミッドウェー海戦」でも第十一航空戦隊の【瑞穂】【千歳】の護衛を務めるなど、護衛も多く任されました。
7月、第十八駆逐隊の【霞】【霰】【不知火】が潜水艦の魚雷によって相次いで大破、沈没して1隻だけとなってしまった【陽炎】を迎え入れ、第十五駆逐隊は4隻を回復します。

引っ張りだこだった【親潮】は、8月からの「ガダルカナル島の戦い」にも必要とされましたが、最初は鼠輸送任務を任されることになります。
これまで主力艦隊の護衛や攻撃部隊が多かった【親潮】ですが、陸上戦も非常に重要だったこの戦いでは支援に回ることも多くありました。

10月からは「南太平洋海戦」「第三次ソロモン海戦」にも参加していますが、いずれも戦場のど真ん中には配置されていませんでした。
そして水雷戦隊を語る上で欠かすことができない戦い「ルンガ沖夜戦」でも、【親潮】はやはり輸送のためにドラム缶を積んで出撃していました。

「第三次ソロモン海戦」の敗北は鼠輸送以外の輸送手段がなくなったことを意味し、またも少量の物資を高速で運ぶ延命措置に注力せざるを得なくなりました。
そしてその物資搭載量を少しでも増やすべく、輸送担当の駆逐艦は予備魚雷を降ろすなど、とにかく空きスペースをドラム缶搭載に活用したため、戦闘能力を下げざるを得ませんでした。

11月29日深夜、【長波】【高波】【巻波】を警戒艦とし、8隻の駆逐艦がショートランド泊地を発ち、ガダルカナル島を目指しました。
しかし午前8時には早々に敵機に発見され、各艦は水上戦を覚悟しながら進軍。
午後3時半ごろには空襲も浴びますが、ここは大事無く切り抜けます。
そして予想通り敵巡洋艦部隊と遭遇し、第二水雷戦隊の田中頼三司令官は輸送中止を決定。
ここで「ルンガ沖夜戦」が始まったわけです。

先頭にいた【高波】が敵に気付いた時、敵との距離はわずか6,000m。
レーダーでわずかに早く【高波】の位置を把握していた【米ニューオーリンズ級重巡洋艦 ミネアポリス】を旗艦とする第67任務部隊により、【高波】は猛烈な砲撃を浴びてしまいます。
しかしその間に他の駆逐艦が次々と戦闘態勢に入り魚雷を発射していきます。

【親潮】【黒潮】と共に敵の後方に回り込むことに成功し(日米の記録の違いがあるため確実ではありません)、21時28分に魚雷を発射。
この戦いは誰の魚雷がどの船に命中したかはっきりしていませんが、少なくともこの2隻、そして【陽炎、巻波】からの魚雷のいずれかが【米ノーザンプトン級重巡洋艦 ノーザンプトン】の艦後部に2発命中。
うち1本は機関室付近に直撃し、航行不能に加え浸水が急速に進み、みるみるうちに横転沈没していきました。

他に【米ニューオーリンズ級重巡洋艦 ニューオーリンズ、ミネアポリス】【米ペンサコーラ級重巡洋艦 ペンサコーラ】を大破に追い込み、この海戦は日本の大勝利に終わります。
しかし炎上中の【高波】は現場に取り残され、【親潮、黒潮】は一番離脱が遅く戦場に近かったことから【高波】の救助を命じられます。
【高波】はメラメラと炎を上げながらもまだ浮かんでいたため、【親潮】が救助のため横付けを試みます。

ところがその燃え盛る炎の裏に大きな艦影が現れたのを見張員が発見。
この船の正体は【ペンサコーラ】か唯一無事だった【重巡洋艦 ホノルル】のどちらかだと思われますが、【親潮】には魚雷が残されておりません。
【黒潮】にはまだ2本魚雷が残っていましたが、命中すればいいもののしなければこちらが砲撃で吹き飛ばされます。
共倒れを防ぐためにやむを得ず救助は打ち切られ、【黒潮】は魚雷を発射。
しかし残念ながら命中が認められなかったことから、そのまま【高波】を残して2隻は撤退することになりました。

輸送は失敗したものの、水雷戦隊の面目躍如となった「ルンガ沖夜戦」。
一方で、11月には【早潮】「ラエ輸送作戦」中に空襲によって沈没。
第十五駆逐隊はまたもや3隻となってしまいました。

「ムンダ輸送作戦」に従事して昭和17年/1942年を締めくくった【親潮】は、翌年には呉で修理に入り、3月まで休息を取ることになりました。
復帰後、【親潮】は、【大鷹】【冲鷹】をトラック島まで護衛した後、「コロンバンガラ輸送作戦」に参加しました。
同作戦は6回にわたって実施され、【親潮】はまずは1回目と3回目に参加します。
順調に物資輸送が進んでいたこの作戦でしたが、航路は全く一緒のままであり、米軍はこれを利用して航路に機雷を敷設していきます。
そしてその犠牲者となったのが、【親潮】たち第十五駆逐隊です。

5月7日、雨の中を進んでいた3隻でしたが、目前のファーガソン水道付近で、豪雨により視界が遮られ、また揚陸も困難なため、いったん反転して雨が収まるのを待ちました。
おかげで到着は3時間遅れとなり、夜明けを心配する声がチラホラ聞こえてきます。
帰りは急がなくては。

ガダルカナル島に到着するや否や、急いで物資の揚陸を開始。
気が付けば午前3時を回っており、すでに若干水平線は明るくなっています。
揚陸が終わるとすぐさま3隻は島を離れ、コロンバンガラ島に別れを告げます。
それが今生の別れになろうとは夢にも思わなかったでしょう。

出港から40分ほど経過した時、突然とんでもない衝撃が【親潮】を襲いました。
これは間違いなく海面で何かが炸裂したものでした。
その何かは機械室付近で爆発したらしく、浸水と火災で後部は無茶苦茶になっていました。
当然動くことはできず、【親潮】は必死に消火と浸水防止にあたります。

一方残り2隻はこの【親潮】の被害を潜水艦の魚雷と考え、急いで動きを速め警戒を強めます。
ところがすぐに2隻目の被害者が現れます。
【親潮】同様唐突な爆発を起こしたのは【陽炎】でした。
横からではなく、下から突き上げられるかのような衝撃、この衝撃を受けて【陽炎】の水雷長はすぐに「機雷だ」と悟ったと言います。

唯一被害を受けていない【黒潮】ですが、【黒潮】もまたパニックになっていました。
【黒潮】はやたらに爆雷を投げ込み、次に飛び込んでくる雷跡を見逃すまいと必死にウロウロしながら海面をにらみつけるしかありません。
そんな【黒潮】はまるで誘われるように機雷群に突っ込んでいきました。

【親潮】の被雷から1時間ほど経過したところで、【黒潮】は立て続けに3つの大爆発を起こし、次の瞬間には消失していました。
アメリカの高笑いが聞こえるようです、定期便となった航路にばら撒いた機雷にまんまと獲物がかかったわけですから。

3つの機雷によって3つに分断されて沈没した【黒潮】の末路を見て、【親潮】【陽炎】は恐怖します。
【黒潮】が無事ならまだ曳航してコロンバンガラ島まで逃げ切ることができたかもしれないからです。
これで移動手段を絶たれた2隻は沈没は確実となったため、早くも艦内では暗号文などの処分が始まります。

そして夜が明けると、想像通り敵さんが空からやってきました。
幸い天候が悪かったため派遣されたすべての機が到来したわけではありませんでしたが、それでも敵機の銃撃は2隻を痛めつけていきました。
【親潮】は漂流後に暗礁に乗り上げたようで停止しており、そこに艦尾付近に直撃弾を1発受けます。
【陽炎】も至近弾などで火災が発生しましたが、いずれもこの攻撃が致命傷にはならず、何とか耐え忍んでいます。

とは言うものの沈没する未来に変わりはありません。
【親潮】は潮が満ちたことで離礁しますが、その代わりに徐々に傾斜が始まったため総員退去命令が下されます。
その後【陽炎】も総員退去となり、ここに第十五駆逐艦は崩壊しました。

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駆逐艦
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※1 当HPは全て敬称略としております(氏をつけるとテンポが悪いので)。

※2 各項に表記している参考文献は当方が把握しているものに限ります。
参考文献、引用文献などの情報を取りまとめる前にHPが肥大化したため、各項ごとにそれらを明記することができなくなってしまいました。
勝手ながら今は各項の参考文献、引用文献をすべて【参考書籍・サイト】にてまとめております。
ご理解くださいますようお願いいたします。