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長波【夕雲型駆逐艦 四番艦】その1

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起工日昭和16年/1941年4月5日
進水日昭和17年/1942年3月5日
竣工日昭和17年/1942年6月30日
退役日
(沈没)
昭和19年/1944年11月11日
第三次多号作戦
建 造藤永田造船所
基準排水量2,077t
垂線間長111.00m
全 幅10.80m
最大速度35.0ノット
航続距離18ノット:5,000海里
馬 力52,000馬力
主 砲50口径12.7cm連装砲 3基6門
魚 雷61cm四連装魚雷発射管 2基8門
次発装填装置
機 銃25mm連装機銃 2基4挺
缶・主機ロ号艦本式缶 3基
艦本式ギアード・タービン 2基2軸
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「テキパキ」は設定上、前後の文脈や段落に違和感がある場合があります。

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日が沈む日本を背に、ガダルカナルの海を行く

「夕雲型」三番艦にあたる【風雲】が3月28日に竣工しましたが、四番艦である【長波】竣工は6月30日と3ヶ月間隔が空いています。
【巻雲】【風雲】も3月下旬なので微妙ではありますが、【長波】以降の「夕雲型」はほんとに日本がイケイケの時代を知らないどころか、「ミッドウェー海戦」をも経験していないことになります。
なので日本の空母が強かったという話をしても、彼女たちはピンとこないわけです、なにせ殊更強かった4隻はすでに沈んでいるのですから。

そんな時代に誕生した【長波】は、最初は肩慣らしで警備駆逐艦として相模湾付近での哨戒活動を行います。
しかしすぐに遥か北で【霰】沈没、【霞】【不知火】大破という大損害を負ってしまったことで、生き残った2隻の救援をしなければならなくなりました。
2隻はキスカ島まで避難したものの長距離の曳航はできず、しかもキスカ島は占領したばかりである上に未開の地なので、何にもありません。
そのため本土から物資や人員を送り届ける必要があり、その役目を【長波】が担うことになりました。

7月20日に【長波】は横須賀を出港。
1週間かけてキスカに向かい、物資と人材を送り届けた後、【白山丸】を護衛して横須賀に帰ってきました。

五番艦の竣工を待つ関係で【長波】は駆逐隊を編成していなかったのですが、8月18日に【巻波】が竣工。
そして31日に2隻で第三十一駆逐隊を編成し、また第二水雷戦隊に配属となります。
当時日本に残っていた【金剛】【榛名】とともに訓練を行った後、「ガダルカナル島の戦い」を支援するためにトラック島に向かいます。

しかし9月の陸軍突撃作戦が失敗に終わり、10月には戦艦からの艦砲射撃のために護衛として再出撃します。
ちなみに10月1日に【高波】が編入されて第三十一駆逐隊は3隻となっています。
13日の艦砲射撃は戦艦砲による派手な攻撃となり、【長波】も魚雷艇の排除に一役買ったのですが、この時アメリカはすでに新しい滑走路を整備してたため効果は限定的なものとなってしまいます。
なので翌日の【鳥海】【衣笠】の艦砲射撃の裏で行われていた輸送に対してまさかの空襲が行われ、急遽追加の艦砲射撃をすることになりました。

次に砲撃を行うのは【妙高】【摩耶】で、【五十鈴】と第三十一駆逐隊がこれに続きます。
重巡2隻が艦砲射撃を行う中、護衛の4隻も途中から砲撃に参加しましたが、やはり戦艦砲ですら効果が限定的なのに口径が劣る主砲の砲撃では大して役に立たず、帰り道に襲われることはなかったものの根本的な問題は残されたままでした。

その後も「南太平洋海戦」に際して【長波】は前進部隊(【金剛、榛名】中心)に所属して出撃していますが、敵空母を無力化したとはいえヘンダーソン飛行場が衰えることはありませんでした。
しかし空母がいなくなったのは確かなので、総攻撃のために戦力を集中させる最後のチャンスが到来したのです。
これまでガダルカナルなどへの鼠輸送は外南洋部隊増援部隊の第三水雷戦隊が担当していたのですが、激務が続いていたのでこの役割は11月に第二水雷戦隊へ移管されます。
そして早速【長波】は噂に聞く鼠輸送なるものを経験しました。

11月6日、11隻の駆逐艦がショートランドを出撃し、ガダルカナルを目指します。
【長波】にとって初めての鼠輸送は、早速過酷な現実を突きつけられます。

上空には先日砲弾を浴びせてきたヘンダーソン飛行場から航空機がバタバタとやってきて、丸裸の【長波】達に次々に爆撃を投下し始めます。
右へ左へと舵を切り、落ちてくる爆撃を回避しますが、【長波】【高波】はこの爆撃で損害を出しています。
【長波】は戦死者4名を出しながらも輸送は続行され、無事に物資を送り届けることができました。

この流れで日本は「金剛型」4隻をつぎ込んで強引に海域を突き破り、輸送と艦砲射撃、そして陸軍の総攻撃よりヘンダーソン飛行場を奪還するために動き出します。
ただ【金剛、榛名】は支援隊で前面に出るわけではなく、ソロモン海を突き進むのは【比叡】【霧島】となりました。
またこの挺身攻撃の裏で輸送を行うのはもちろん第二水雷戦隊で、【長波】は挺身攻撃の作戦成功を期待しながら、12日午後、ショートランドを出撃します。

しかしこの夜から始まった「第三次ソロモン海戦第一夜」は、敵味方が戦場で入り乱れながら主砲、魚雷、機銃、あらゆるものが飛び交う空前の大混戦となりました。
艦隊戦となったことで飛行場は封殺できず、輸送は危険なので反転を余儀なくされます。
その後【比叡】が沈みますが、輸送は諦めず、翌日もう一度出撃。
次の機会がないから突っ込んだわけですが、早朝の第七戦隊の艦砲射撃もやはり効果は限定的で、さらに反撃の空襲が襲いかかり、ここで第七戦隊と合流していた第八艦隊の【衣笠】が沈没してしまいます。
さらに空襲はこれだけに止まらず、輸送部隊も銃弾スコールに見舞われることになりました。

この空襲で11隻の輸送船のうち【かんべら丸、長良丸、ぶりすべん丸、信濃川丸、ありぞな丸、那古丸】が沈没し、【佐渡丸】が大破傾斜状態で撤退。
駆逐艦は海に投げ出された数えきれないほどの乗員を救助せねばならず、【長波】は570名を救助したと記録されています。
さらに偵察により、戦艦だけでなく【エンタープライズ】までもが復帰していることが明らかとなり、これに対抗すべく【霧島】達は艦砲射撃だけでなく輸送部隊を守るために敵艦隊を攻撃する任務も背負います。
そして始まった「第三次ソロモン海戦第二夜」の隙に、輸送部隊はタサファロングに突入して揚陸を開始。
この時二水戦司令官の田中頼三少将は、輸送船は沈没の恐れを排除するために意図的に擱座するように命令します。
輸送船を救うことは諦め、少しでも揚陸物資を増やそうとの考えでしょう。

しかし「第三次ソロモン海戦第二夜」では【米サウスダコタ級戦艦 サウスダコタ】を撃破しましたが【米ノースカロライナ級戦艦 ワシントン】が的確な攻撃を【霧島】に繰り出し、【霧島】は沈没してしまいます。
ヘンダーソン飛行場も守り抜かれ、日が昇ると輸送船は爆撃で次々に焼かれていきました。
焼かれる前に揚陸できた物資もないことはないのですが、これも十分に補給されたかと言われると否であり、浜辺に残された物資は輸送船とともに多く焼失しています。

ここまで前でも後ろでもかなり活躍をしてくれた「金剛型」が半壊し、それでもヘンダーソン飛行場はまだ敵の手中にあります。
もはや「ガダルカナル島の戦い」の勝機は風前の灯火でした。
これまで輸送には輸送船によるものの他に、水上機母艦を用いた輸送、そしてもちろん駆逐艦を用いた鼠輸送も実施されていました。
ですが11月3日に【千歳】【日進】はトラック島に引き揚げており、高速輸送が可能なのは駆逐艦だけとなっていました。

さて、その鼠輸送を再度行う任務を受けた二水戦の中で、【長波】は旗艦となりました。
月明かりが明るくて見つかりやすいなどの理由で田中少将は輸送を12月1日以降にしてほしいと訴えますが、食糧が払底していたし、潜水艦による輸送では運べる量は駆逐艦よりも少ない中で、1日でも遅らせることはできないと却下されました。
増援部隊は警戒隊として【長波、高波】、輸送隊に【巻波】【親潮】【黒潮】【陽炎】【涼風】【江風】が選ばれています。

輸送隊は予備魚雷を降ろして大量のドラム缶と揚陸用の【小発動艇】も搭載し、物資優先で準備をして出撃しています(警戒隊に予備魚雷が積まれていたかどうかは、実は確証がない。【高波】は搭載せずとの証言あり)。
ドラム缶の中に物資をぎっしり詰めると重いし浮きづらいので、中身は半分程度で空気を含ませ、【大発動艇】でロープを引っ張って浜から引き上げるという方式をとっています。

29日22時30分、増援部隊はショートランドを出撃し、ガダルカナルを目指します。
ところが30日7時過ぎには敵偵察機に発見され、早くも行く手に障害が現れるであろうことが見込まれました。
12時半ごろ、田中少将「今夜会敵の算大なり 会敵時は揚陸に拘泥することなく敵撃滅に努めよ」と下令しています。
任務は輸送なのでもちろん大事ですが、ドラム缶を守って海戦でボコされると何の意味もありません。

当時の天候はあまりよくなく、めったに日は差しませんでした。
さらに南下中にはスコールにもあい、進路を把握することが難しくなります。

20時を回り、視界は少しずつ回復。
警戒隊である【高波】が部隊に先行して(命令か独断なのか検証の余地あり)偵察を行います。
そして1時間ほど経ち、サボ島を左舷に見る場所で、【高波】は距離6,000m先に敵の艦影を発見します。
すぐに輸送隊の【黒潮】からも敵発見の報告があり、【高波】は臨戦態勢に入りました。
ただ前述のとおり戦闘ではなく輸送が仕事ですから、もし敵が気付いていないのなら黙ってやり過ごそうと司令部は考えていました。

ですが敵には重巡4隻という巨大な存在があり、そして当然レーダーを搭載していました。
第67任務部隊の旗艦である【米ニューオーリンズ級重巡洋艦 ミネアポリス】は、レーダーにより【高波】ではなく後方の部隊を20,000mほどの距離で察知。
つまり増援部隊は存在がバレていたので、コソコソ通り過ぎることはできなかったのです。
【長波】からは「揚陸止め。戦闘、全軍突撃せよ」との命令が下ります。

敵の動きは明らかに我が方を目指しており、さらには敵から星弾まで放たれたのであれば、最早逃げることはできません。
攻撃命令後も【高波】は淡い希望を抱きながら沈黙を守っていたのですが、星弾をきっかけに主砲が火を噴きます。
「ルンガ沖夜戦」が始まりました。

先頭にいた【高波】には、巡洋艦からの砲弾が無数に浴びせられました。
【高波】は猛攻を受ける中でも魚雷発射を抜かりなく行い、さらには駆逐艦への砲撃により火災も発生させています。
ですが巡洋艦の砲撃を駆逐艦が耐えられるわけもなく、【高波】は缶室付近への被弾などが原因ですぐに動かなくなりました。

一方残りの駆逐艦は、【高波】が攻撃を引き受けている間に次々に酸素魚雷を発射します。
各艦の動きが異なるため発射の時刻に差がありますが、やがて隠蔽性に優れる長射程の魚雷が次々に巡洋艦に命中していたました。
【米ノーザンプトン級重巡洋艦 ノーザンプトン】撃沈、【ミネアポリス】と【米ペンサコーラ級重巡洋艦 ペンサコーラ、ニューオーリンズ級重巡洋艦 ニューオーリンズ】を大破させ、あっという間に戦況がひっくり返りました。
【高波】はその後沈没してしまいますが、日本に対して大アドバンテージとなっていたアメリカが【米ブルックリン級軽巡洋艦 ホノルル】を除いてボロボロになったので、海戦は大勝利に終わりました。

しかし大破とはいえ巡洋艦が生き残っている事実は変わらず、また【黒潮】【親潮】【高波】乗員の救助に向かった際も、【ペンサコーラ】と思われる重巡が現れたことで救助を打ち切ってしまっています。
なので輸送を続行することもできず、そもそも戦闘前にドラム缶は相当数投棄されており、結局アメリカはまたも大きな損害を出しつつも日本がしたかったことはしっかり妨害したのです。

他の問題点も戦闘終了後に追及されました。
【長波】【高波】が被害を受けた直後に反撃を命令し、部隊は砲撃を開始しています。
同時に魚雷を発射していますが、その命令後、【長波】は後方に退避し、戦闘の行く末をただ見守っていただけでした。
さらに魚雷をすべて撃ち尽くして反撃手段のない駆逐艦に【高波】の救助をさせる、そしてそもそも田中少将がドラム缶輸送に否定的だったこともあり、彼は12月末で左遷されてしまいます。

一方で米軍の【長波】の評価はかなり高いです。
この海戦はレーダーにより先手を取った米艦隊に主導権があり、さらには戦力も圧倒的に上、反撃の余地なく蹴散らしたあとに退避する予定でした。
ところが増援部隊はすぐさま米軍に攻撃を開始し、退避を許さずに戦場に引きずり込み、さらに適切に魚雷を撃ち込んでいます。
そしてそれに応えた二水戦も合わせて大きく褒め称えています。
ただしこの評価は戦闘に対するもので、輸送を実現できなかったという側面は含まれません。

【長波】は他の駆逐艦と共に12月4日にもう一度輸送のために出撃します。
この時もやはり空襲を受けましたが、【巻波】が至近弾を受けた程度で突破。
無事に1,500缶が投入され、今回の輸送は無事成功しました。
ですがいくら中身が半分とはいえ、引っ張る力は半分以下になっているガダルカナルの骨川筋右衛門達なので、幾重にも連なったドラム缶を引き揚げるのはそう簡単ではなく、夜中のうちに回収しきれなかったものがまだ海上に浮かび続けていました。
それを明け方に機銃掃射などによって次々に破壊されてしまい、結局310缶しか回収できなかったようです。

7日の輸送は先日の至近弾により【巻波】がメンバーから外れています。
往路の空襲では【野分】が機関室右舷付近の至近弾により航行不能となりました。
【長波】【野分】を曳航、【有明】【嵐】が護衛して撤退する一方で輸送は継続されたのですが、その後魚雷艇との戦いもあって3回目の輸送は失敗してしまいました。

11日には空襲に対抗するために「秋月型」【照月】が新たに参加。
ただ【照月】にとっては二重の不運となり、空襲がなく自慢の対空射撃が発揮できなかった上に、揚陸作業中に魚雷艇に襲われて何と沈没してしまいます。
この輸送も海への投下数に対して回収数が非常に少なく、結局この輸送結果を含め、年末にガダルカナルからの撤退が正式に決定します。

ですが駆逐艦の仕事がなくなるわけではありません。
【長波】はすぐにショートランドからムンダへの輸送に参加しています。
25日はラバウルからムンダへ向かうの輸送を行っていた【南海丸】が潜水艦に襲われ、さらにその護衛だった【卯月】【南海丸】と衝突してしまいます。
【長波】【浦風】【谷風】【有明】とともに救援に派遣され、みんなラバウルまで戻ることができました。

年が明けると、月明かりも落ちる時期に入ったことでガダルカナルへの鼠輸送が再開されます。
ただ昭和18年/1943年1月3日の輸送では空襲を受けて【涼風】が損傷。
輸送は成功したのですが、二水戦は短期間でかなり酷使されていることから入れ替えが求められます。
【長波】も度重なる激務によってスクリュー軸が摩耗しており、振動が激しくなってました。
まもなく大規模な撤退作戦である「ガダルカナル島撤収作戦(ケ号作戦)」が始まるわけですが、【長波】や空襲を受けた【涼風】、また【陽炎、親潮】も14日にトラックまで引き上げます。
戻った4隻は前進部隊、つまり【金剛、榛名】と同じ部隊に復帰し、【長波】はしばらく【巻波】と分かれて激戦地から離れることになります。

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