竣工日 | 昭和18年/1943年1月25日 |
退役日 (沈没) | 昭和18年/1943年7月20日 |
チョイスル島 | |
建 造 | 浦賀船渠 |
基準排水量 | 2,077t |
垂線間長 | 111.00m |
全 幅 | 10.80m |
最大速度 | 35.0ノット |
航続距離 | 18ノット:5,000海里 |
馬 力 | 52,000馬力 |
主 砲 | 50口径12.7cm連装砲 3基6門 |
魚 雷 | 61cm四連装魚雷発射管 2基8門 |
次発装填装置 | |
機 銃 | 25mm連装機銃 2基4挺 |
缶・主機 | ロ号艦本式缶 3基 |
艦本式ギアード・タービン 2基2軸 |
唯一の海戦は二水戦の華 夕暮と共に沈んだ清波
【清波】が竣工したのは昭和18年/1943年1月25日。
「夕雲型」は【夕雲】を除いて戦時竣工ですが、【清波】からは1943年誕生となります。
実際の戦況としては「ガダルカナル島撤収作戦(ケ号作戦)」実行直前で、当然訓練なども必要なので【清波】はこの作戦には参加していません。
2月25日に【清波】は第三十一駆逐隊に編入。
【長波】と【巻波】によって登場した第三十一駆逐隊は、それから半年後にようやく定数4隻を確保することができました。
ただこの間に【高波】が「ルンガ沖夜戦」で沈没していたので、4隻揃えることそのものの苦労が伺えます。
【清波】の初任務は【盤谷丸、西貢丸】の護衛で、【海風】とともに2隻をトラック島まで送り届けます。
本来はこの後ラバウル経由でムンダに移動する予定だったのですが、ルートが変更になりギルバート諸島のタラワへ向かうことになります。
【海風】とはトラックで別れますが、代わりに第一小隊を構成する【大波】が輸送に加わりました。
しかし無事タラワまでの輸送が完了したあと、いきなり【大波】とは別行動となってしまいます。
【清波】はクェゼリン環礁ルオットまで向かい、そこで【天城山丸】と合流、これを護衛してトラックに戻りました。
翌日呉から単艦でトラックへ向かっていた【靖国丸】の護衛に向かい、27日に再びトラックに戻ってきます。
実は【清波】が第三十一駆逐隊の僚艦と一緒に仕事をしたのがこれが最初で最後、ここからはずっと別行動になります。
別行動なのに4月8日に【清波】は【大波】とともに第二海上護衛隊に編入されます。
大まかにいうと船団護衛と対潜哨戒に特化した部隊ですが、いきなり【清波】に出番がやってきました。
11日、トラックを出て日本に戻るところだった【伊16】が、回避できましたがどこかから魚雷を撃たれたのです。
この報告を受けて【清波】は【時雨】【有明】とともに対潜哨戒を実施。
同日夜に【清波】が撃沈確実を報告したのですがその報告は認められず、結局13日まで哨戒活動は続きました。
ちなみにこの雷撃を行った潜水艦の正体はわかっておらず、また判断通りこの爆雷で沈没した可能性がある潜水艦も記録されていません。
以降も【清波】は日本からトラック、ラバウルなどの輸送護衛に精を出しますが、6月末ごろから連合軍がニュージョージア島へ侵攻してきます。
「ニュージョージア島の戦い」の始まりです。
【清波】は【夕暮】とともに【玄洋丸】を護衛してラバウルへ向かいますが、到着前日夜の7月5日に「クラ湾夜戦」が発生して第三水雷戦隊司令部が全滅した上に【新月】沈没、【長月】座礁放棄という大きな被害を出してしまいました。
三水戦を束ねる者がいなくなると組織が機能しないので、急遽ニュージョージア島増援部隊の指揮を【鳥海】が執ることになります。
また戦力を補強するために、増援部隊には【神通】と【清波】が助っ人で入ることになりました。
【神通】は第二水雷戦隊旗艦で、また三水戦は伊集院松治大佐が後任の司令官として着任しましたが、着任即最前線で仕事ができるわけもなく、その影響で増援部隊の実働指揮は二水戦が行うことになりました。
ということはつまり、コロンバンガラへの輸送は実質二水戦が担当したということです。
13日未明、【神通、清波、夕暮】【雪風】【浜風】【三日月】がラバウルを出撃。
一方で輸送隊は同日夜にブインを出撃し、両隊は道中で合流し、コロンバンガラを目指していました。
しかし輸送隊の動きは偵察情報でアメリカにはすでに知れ渡っていて、アメリカは「クラ湾夜戦」の時以上の戦力を整えた第36.1任務群で【清波】達を迎え撃つ体制をとっていました。
コロンバンガラに近づくと、【雪風】の逆探に反応がありました。
つまり敵がレーダーを放っているということです。
今夜もやはり敵はすんなりと道を通してくれないようで、23時ごろに両者敵を視認。
正面衝突で「コロンバンガラ島沖海戦」が勃発しました。
この時旗艦かつ先頭だった【神通】が探照灯を照射。
もちろん敵の標的となり、【神通】はいきなり砲撃の嵐に晒されてしまいます。
【神通】には軽巡砲が炸裂し、何分もしないうちに身動きが取れなくなり、士官も軒並み戦死してしまいました。
しかし「ルンガ沖夜戦」の時のように先頭の船に砲撃が集中したことで、残り5隻の駆逐艦は自由に動くことができました。
駆逐艦は魚雷を発射し、【英リアンダー級軽巡洋艦 リアンダー】に命中し大破させ、その後スコールに紛れて次発装填の時間を有効に使います。
ただ【三日月】だけは次発装填装置がないため、ここで戦場から離脱しました。
鬱陶しい駆逐艦が視界から消えたことで、敵の砲撃はまた【神通】に向けられ、【神通】はここで止めの魚雷を受けて沈没。
【神通】はこれだけ四面楚歌な状態でも反撃をやめず、また魚雷を発射した上にその後人力での次発装填すら行ったと思える形跡があります。
その【神通】が沈められてから少し経つと、再び【清波】達が魚雷を込めて突入してきました。
この時敵は【清波】達を追っていた【米フレッチャー級駆逐艦 ニコラス】などの行方が知れておらず、新たにレーダーが捉えた駆逐艦が敵か味方か判断ができませんでした。
同士討ちを避けたことから敵からの砲撃は飛んでこず、【清波】達は十分に距離を詰めて再度魚雷を発射することができました。
敵だと判断した時にはもう遅く、【米セントルイス級軽巡洋艦 セントルイス】と【米ブルックリン級軽巡洋艦 ホノルル】が被雷、さらに【米グリーブス級駆逐艦 グウィン】は魚雷を受けて沈没しました。
混乱の中で【米グリーブス級駆逐艦 ブキャナン】と【米ベンソン級駆逐艦 ウッドワース】も衝突し、第36.1任務群は【神通】1隻の獲物に目が眩んで凄まじい損害を出してしまいます。
「コロンバンガラ島沖海戦」はこのような形で日本が大勝利。
さらにこの手の海戦では大体達成できていなかった輸送も今回ははこなしており、戦術的、戦略的のいずれでも勝利を収めた戦いとなりました。
しかし先日三水戦が崩壊したのと同じく、この戦いでも【神通】と二水戦司令部が壊滅。
船1隻の喪失ではとても片付けられないダメージを日本も受けました。
三水戦が整わないので二水戦に場を繋いでもらおうと考えていたら、その二水戦までもがなくなってしまったので、20日には強引に第四水雷戦隊をほとんどそのまま二水戦に入れ込むことになりました。
幸い純粋な戦力は【神通】以外維持できたので、組織運営さえ建て直せれば何とかなったのでしょう。
「コロンバンガラ島沖海戦」を経て敵戦力を削ぎ落した日本は、コロンバンガラへの輸送を続行させます。
残った敵戦力に踏ん張られると困るため、ここで三水戦だけでなく第七戦隊も輸送護衛に加わることになりました。
ちなみに駆逐艦は【清波、雪風、浜風、夕暮】が護衛として出撃していますが、今回は三水戦の指揮下になります。
これで16日夜にラバウルを出撃した増援部隊には新たに【鈴谷】【熊野】が加わり、ずいぶん強力になります(【鳥海】は留守番)。
ただ輸送の出発点であるブインが17日に空襲されてしまい、ここで【初雪】が沈没してしまいます。
輸送隊が出撃できないなら、攻撃要因の夜襲部隊が出ても仕方ないので、【清波】達はいったん撤退。
18日に今度は【鳥海】も加わって再度ラバウルを出発しました。
輸送隊と合流してコロンバンガラに近づくと、【清波】達はベラ湾付近で敵の進入を防ぐために待機。
今回は敵の姿はなく、またまた輸送が完璧に行えました。
ですが今回の敵は海にはおらず、空で待ち構えていました。
レーダーを備えた【PBY】が【清波】達を発見し、その報告を受けてヘンダーソン飛行場から航空機が次々に飛び立ちました。
真夜中の空襲で対応が遅れ、まず【TBF】の雷撃を許してしまい、この攻撃で【夕暮】が轟沈。
さらに【熊野】にも魚雷が命中し舵を故障して速度が低下します。
輸送隊の【水無月】【松風】も小破し、とにかく逃げるしかありませんでした。
しかし轟沈した【夕暮】に手を伸ばすものがいました。
それが【清波】です。
【清波】は危険を顧みず【夕暮】が沈んだ場所まで向かい、何とか船から脱出した乗員の救助を行いました。
無防備な【清波】はそのまま敵の標的になってしまいます。
【清波】からは「夕暮乗員救助中」という通信を最後に、連絡がぱったり途切れてしまいます。
【清波】もまた、空襲によってこの海で数発の爆撃を受けて沈没してしまいました。
残った船は彼女らの助けに回る余裕がありませんでした。
【清波】を襲った空襲は第二波とされていたため、もし戻ってくるとさらに被害は拡大していたかもしれません。
しかし救助がないということはすなわち命がないということ。
【清波】の乗員は、西川水兵長が孤島に漂着して8月5日に救助されるまで、【夕暮】乗員とともに総員戦死とされていました。