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高波【夕雲型駆逐艦 六番艦】
Takanami【Yugumo-class destroyer】

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起工日昭和16年/1941年5月29日
進水日昭和16年/1941年3月16日
竣工日昭和17年/1942年8月31日
退役日
(沈没)
昭和17年/1942年11月30日
ルンガ沖夜戦
建 造舞鶴海軍工廠
基準排水量2,077t
垂線間長111.00m
全 幅10.80m
最大速度35.0ノット
航続距離18ノット:5,000海里
馬 力52,000馬力
主 砲50口径12.7cm連装砲 3基6門
魚 雷61cm四連装魚雷発射管 2基8門
次発装填装置
機 銃25mm連装機銃 2基4挺
缶・主機ロ号艦本式缶 3基
艦本式ギアード・タービン 2基2軸
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「テキパキ」は設定上、前後の文脈や段落に違和感がある場合があります。

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短くも、鮮烈な一生 高波

【高波】は昭和17年/1942年8月31日に竣工。
当時はすでにガダルカナル島とソロモン海域では激しい戦いが繰り広げられていました。
9月27日、沖輸送(沖兵団の輸送なので沖輸送)の一環として【輸送船 賀茂丸】【陸軍病院船 波上丸】を護衛し、ラバウルへ向かう任務となります。
しかし10月7日、ラバウル到着直前で【米サーゴ級潜水艦 スカルピン】の襲撃を受けて【波上丸】が沈没。
【高波】は279名の生存者を救助しましたが、ほろ苦いデビューとなってしまいました。

輸送中の10月1日に第三十一駆逐隊に編入されることが決定された【高波】は、10月10日にトラック島で僚艦の【長波】【巻波】と合流。
自身含め「夕雲型」は戦争しながら順次建造だったので、通常の4隻編成を待たずに、竣工された船から順に編成されています。
第三十一駆逐隊は第二水雷戦隊に所属しており、ここから【金剛】【榛名】を中核とした第三戦隊のお供をします。

11日、第三戦隊はトラックを出撃してヘンダーソン飛行場への艦砲射撃に参加します。
この裏ではガダルカナルへ向けて輸送船団が向かっており、艦砲射撃はこの輸送支援のためでもありました。
実はこの砲撃は事前の情報で機動部隊が動いているとか艦隊が待ち伏せているとか、結構嫌な感じの報告が届いていました。
しかし実際はこの砲撃を妨害するものははなく(魚雷艇を【長波】が排除したぐらい)、13日深夜から砲撃が始まります。

榴弾と三式弾、さらには徹甲弾までぶち込み、1,000発近い砲弾がヘンダーソン飛行場に降り注ぎました。
ヘンダーソン飛行場は炎に飲み込まれ、航空機の半数近くが何らかの被害を受けました。
滑走路にも相当なダメージを与え、この艦砲射撃は十分な効果を上げたと思われていました。

ところがこの時、ヘンダーソン飛行場にはすでに小さめではあるものの2本目の滑走路が完成していて、この存在を日本は把握できていませんでした。
なのでたとえ1本がボロボロになろうとも、もう1本が無事なら飛行機さえあればちゃんと反撃ができる体勢だったのです。
この2本目の滑走路が、早速翌日に牙をむきます。

これは【高波】は参加していませんが、14日深夜から【鳥海】【衣笠】が艦砲射撃実施。
その一方で【秋月】達が輸送船を護衛してガダルカナルへ向かっていたのですが、15日にそのヘンダーソン飛行場から現れた航空機が揚陸中の船団に襲いかかります。
この空襲で3隻の輸送船が擱座放棄された上に、揚陸中の物資の多くが焼き払われるなど、2日連続の艦砲射撃がほとんど日本に利をもたらしていないことが明白となりました。

これはまずいと15日夜には【妙高】【摩耶】、そして護衛に【五十鈴】と第三十一駆逐隊が就き、再び艦砲射撃を行います。
艦砲射撃には途中で第三十一駆逐隊も加わり、重巡で900発超、第三十一駆逐隊で253発の砲撃が記録されています。
ただ存在に気付いていない新滑走路と、これまた海からではしっかり視認できない航空機を全滅させるのはかなり非現実的であることから、やっぱり艦砲射撃の効果は非常に限定的でした。
アメリカもいっぱいいっぱいだったのですが、向こうは輸送に危険が伴わないのが強みでした。

陸軍には輸送を催促されるけど、その輸送を邪魔する飛行場はしぶとい。
このままだと戦いには勝てないし陸軍からますます恨みを買ってしまうので、海軍は一航戦【翔鶴】【瑞鶴】と二航戦【飛鷹】【隼鷹】を引っ張りだして(【飛鷹】はその後機関トラブルで中止)、陸軍の突撃を機動部隊で支援するために出撃しました。
艦砲射撃を終えた【高波】達はそのままこの部隊に合流し、その機を伺います。
が、もともと陸の部隊は過酷そのものであり、計画通りに話は進みません。
機動部隊は行ったり来たりしながら待ちぼうけ食らい、本格的に攻撃に向けて動き出したのは25日になってからでした。

そして26日には日本の機動部隊登場に合わせて迎え撃つために【米ヨークタウン級航空母艦 エンタープライズ、ホーネット】が現れて、「南太平洋海戦」が勃発します。
【高波】【金剛、榛名】の前進部隊に所属していたしたが、敵艦隊の目標は空母ですから、目についた飛行機が全部前衛部隊に来るわけではありません。
海戦では【翔鶴】大破と多数の艦載機とパイロットの喪失、一方アメリカ軍も【ホーネット】撃沈、【エンタープライズ】中破など空母が機能停止し、痛み分けの海戦となりました。

敵空母は無力化しましたが、「南太平洋海戦」でもヘンダーソン飛行場の奪還は叶いませんでした。
なので輸送は引き続き駆逐艦のみで行う鼠輸送を選択せざるを得ません。
これまで鼠輸送を担ってきた第三水雷戦隊は損耗が激しいことから、この後鼠輸送は二水戦に引き継がれます。

11月6日、【高波】は初めての鼠輸送を実施。
早速潰し損ねていたヘンダーソン飛行場からの空襲を浴び、乏しい航空支援の中で1名の負傷者を出す輸送になりました。

続いて13日、【翔鶴】大破や航空機補充がままならない日本は、再度艦砲射撃と輸送船を用いた輸送支援で陸軍を後押しする作戦に出ます。
空母は「南太平洋海戦」で潰したので、空の脅威は少なくとも艦砲射撃中はないから、これが最後のチャンスだと第十一戦隊の【比叡】【霧島】が前面に出て制圧戦を仕掛けることになりました。
そして同時に二水戦は11隻の輸送船を護衛し、ヘンダーソン飛行場奪還を目指していました。
これが「第三次ソロモン海戦」につながります。

二水戦だった【高波】はこのド派手な水上戦に参加していません。
ところが第一夜の戦いで日本は【比叡】を失ったほかヘンダーソン飛行場への艦砲射撃も実施できず、このまま突っ込んでも焼かれるだけだと輸送はいったん中止となってしまいます。
優秀な輸送船は初期の戦いの中でたくさん失われてしまったので、この時の船団は低速な船も多く、なおさら無理ができなかったのです。

この結果から【鈴谷】【摩耶】が13日夜に艦砲射撃を行い、輸送はこの裏で行うことになりました。
ところが蜂の巣をつついたような格好となり、撤退中にヘンダーソン飛行場からの反撃を受け、合流した第八艦隊は【衣笠】が沈没しています。
さらには輸送船団も発見されて、11隻いた輸送船は反復攻撃を受けて6隻が撃沈されるという大惨事になります。
この空襲には怪我人の【エンタープライズ】も修理を受けながら参加していて、無茶した甲斐があったわけです。

【佐渡丸】が撤退し、残った輸送船は【宏川丸、山浦丸、鬼怒川丸、山東丸】の4隻のみ。
護衛の駆逐艦は沈没した船から救助した人たちですし詰め状態で、万が一この後交戦などあろうものなら、とてもまともに戦えるものではありませんでした。
しかし海軍はこの4隻を是が非でも活かすため、【霧島】【高雄】【愛宕】で再び艦砲射撃を行うことを決定。
これに対しアメリカ側も【米サウスダコタ級戦艦 サウスダコタ】【米ノースカロライナ級戦艦 ワシントン】をはじめとした艦隊を出撃させ、15日に第二夜の海戦に発展します。

この海戦では【サウスダコタ】を撃破したものの【ワシントン】の砲撃で【霧島】が撃沈され、またも日本は敗北します。
そして肝心の輸送ですが、二水戦司令官の田中頼三少将は船の沈没を避けようとし、すべての輸送船の擱座を決定。
ここに輸送船11隻全ての喪失が決定しますが、急いで揚陸を進めつつ、駆逐艦は乗員の出入りを終えるとすぐさま離脱を開始します。

早急の離脱は功を奏して駆逐艦が帰路で空襲を受けることはありませんでしたが、揚陸中のタサファロングの空は夜明けとともに航空機に覆われました。
輸送船は焼かれ、浜に残された物資も焼かれ、ぼちぼち回収はできたものの多くの物資は役立つことなく灰になってしまいます。
そして同じく、日本の「ガダルカナル島の戦い」の勝ち目も灰になってしまいました。

大一番を終えた後も、【高波】の出番はすぐに来ます。
21日、ショートランドからトラックへ向かう【山陽丸】(どうやら単艦)が、出港間もなく【米サーモン級潜水艦 スティングレイ】に発見され、魚雷を1本受けてしまいます。
【山陽丸】はかなり砲撃を行っていることから、相手は浮上して接近していたのは想像できますが、【山陽丸】は4本の魚雷をすべて回避することはできませんでした。
航行不能になったため、【高波】【天霧】【讃岐丸】とともに救助に向かいました。
幸い沈没するほどの被害ではなかったため、【山陽丸】【高波】に曳航されてショートランドに戻ることができました。
ちなみに【高波】【讃岐丸】の単純な排水量差は1.5倍ほどありますが、【讃岐丸】の馬力が約10,000馬力に対して【高波】は52,000馬力なので、排水量が小さくても【高波】のほうが曳航能力があることになります。

輸送船も軒並み沈んでしまい、鼠輸送はより一層重要度を増しました。
しかし駆逐艦でも揚陸中の空襲は危険であることに変わりありません。
そこで編み出されたのが、ドラム缶輸送でした。
海に浮くぐらいの容量でドラム缶に食料や弾薬などの物資を入れて、大量に用意したドラム缶をロープで繋ぎます。
それを積んで駆逐艦による鼠輸送を実施、沿岸が近づくとドラム缶を海に投げ出し、現地にある【大発動艇】や積んでいく【小発動艇】などがそのロープを回収し、陸まで物資を引き揚げるという方法でした。
これだとドラム缶を放り投げるだけで駆逐艦の仕事は終わりますし、浜ギリギリまで寄らずとも物資を揚陸することができると考えたのです。

29日夜、旗艦に【長波】が座って【高波】とともに警戒隊、【陽炎】【黒潮】【親潮】【巻波】【江風】【涼風】が輸送隊としてドラム缶をパンパンに積み込んで(輸送隊は予備魚雷を下ろして1隻あたり200~240缶搭載)、ショートランドを出撃しました。
予備魚雷については、輸送隊だけでなく【高波】【長波】も降ろしていたという証言があります。
【高波】は先頭に立って隊を牽引します。

しかし翌日朝、航行中にアメリカの偵察機が鼠輸送船団を発見。
直ちにこれを阻止すべく、アメリカは重武裁の重巡洋艦4隻を含む11隻の第67任務部隊に迎撃に向かわせます。

一方【長波】に座乗する田中少将も偵察機に気付いており、各艦に「今夜会敵ノ算大ナリ 会敵時ハ揚陸ニ拘泥スルコトナク敵撃滅ニ努メヨ」と戦闘を覚悟をするように通達。
交戦に陥る場合は邪魔になるドラム缶は投棄せざるを得ないため、それも確認しています。

部隊はスコールを抜けて20時ごろに目印となるサボ島を視認。
ここで東に舵を切り、一行はタサファロングを目指しますが、ここで【高波】が先行することになります。
どうやらこの偵察に見える行動、状況から偵察に見えるものの、はっきりと「偵察してこい」という命令を受けたわけではないようです。
隊列の乱れによるものなのか、はたまた【高波】独断の判断なのか、はっきりしていません。
一方で輸送隊もドラム缶を海に投下する準備も進めます。
敵さんと一戦交える覚悟はしたとはいえ、何事もなければそれに越したことはない、皆そのような思いだったでしょう。

ですが第67任務部隊はそんな希望を打ち砕きます。
21時を回って旗艦の【米ニューオーリンズ級重巡洋艦 ミネアポリス】のレーダーが輸送隊(【高波】ではない)を捉えました。

敵は駆逐艦のみ、大してこちらは数に勝る上に重巡4隻と、圧倒的な戦力差だったことから、まずは駆逐艦で魚雷を発射し、その後駆逐艦は道を開け、魚雷で敵の隊列が崩れたところで重巡砲をお見舞いするという算段を立てていました。
第67任務部隊は艦首を獲物へ向けて引き続き前進します。

対して【高波】と、輸送隊の先頭だった【黒潮】も、数分後には相次いで第67任務部隊の7隻を発見しています。
この段階では敵がこちらに気付いていないという期待も捨てきれなかったのですが、やがて敵影がはっきりし始めると刀を抜かざるを得なくなります。
田中少将からも「揚陸止め、戦闘用意」と命令が下りますが、第三十一駆逐隊の司令である清水利夫大佐はすぐに攻撃を行いませんでした。
こちらも敵を把握していたので、戦闘になっても狼狽することがないのなら、微かな希望があるのにわざわざこちらからそれを捨てることはないと考えたのでしょう。

21時20分、第67任務部隊からの攻撃が始まりました。
輸送隊の上空には星弾が打ち上げられ、キラキラと夜空がまぶしく光ります。
やるしかないと、輸送隊からはドラム缶が次々に投棄され、各艦戦闘配置につきます。
「ルンガ沖夜戦」の始まりです。

先頭の【高波】は星弾によって真っ先に姿が露わになります。
ただこの時第67任務部隊は先手を取れたにもかかわらず、星弾を撃つ前に彼我の距離が離れすぎているのに魚雷を発射してしまい、【高波】や輸送隊には全く届きませんでした。
また【高波】もレーダー反応とは違う場所にいたことから魚雷の進路とは外れており、被雷の危機を回避しています。

【米フレッチャー級駆逐艦 フレッチャー】はレーダーで【高波】(というか前に出ている何らかの船)を捉えていたようで、だから【高波】に魚雷を撃たせろと許可を求めたのですが、本隊をレーダーで捉えている【ミネアポリス】「まだかなり距離あるのに魚雷撃っても当たんねぇよ」と思いながらもしぶしぶ許可をしたような印象です。
なので逆に【フレッチャー】からしたら、【高波】とは全く違う方向に放たれた魚雷を見て、何やっとんじゃと他の駆逐艦の動きが理解できなかったことでしょう。
【フレッチャー】が輸送隊と飛び出していた船の両方を把握していたかどうかはよくわかりませんでしたが、第67任務部隊の魚雷がすべて無効化できたのは、この後日本が魚雷で暴れ散らかすことを考えると非常に幸運でした。

ですが魚雷を放った駆逐艦が離れると、【高波】は重巡部隊の餌食になりました。
【高波】には強烈な20.3cm砲弾が降り注ぎ、小柄な身1つを容易に隠すほどの水柱が周辺に乱立します。
【高波】は死を覚悟しながらもその主砲が沈黙することはなく、まずは付近に残る駆逐艦に向けて反撃を開始。
そのうち2発が敵駆逐艦に命中した後火災を招き、後方に控える輸送隊からの敵の目印となりました。

さらに残された魚雷8本もしっかり砲撃が飛んでくる方向へ発射。
この魚雷発射が【高波】の初にして最後のものとなります。

魚雷を放った直後、【高波】に砲弾が命中しはじめ、ついさっきまで中身のあった魚雷発射管は2基とも吹き飛ばされます。
魚雷を発射したあとだったので誘爆がなかったのは救いでしたが、しかしそれも寿命を何分か伸ばしただけ。
さらに缶室付近の被弾により【高波】の煙突からは白い煙が噴き出し、急速に速度が低下しました。

戦闘中に舵も故障してしまった【高波】はこの後次々に砲撃を受け、艦上構造物まで完全に破壊され、あっという間に洋上のスクラップと化してしまいます。
【高波】が沈没するまでに浴びた砲弾は50発を超えると言われています。
さらには深度が深かったので命中はしませんでしたが、【フレッチャー】が放ったであろう魚雷が【高波】の下を通過していたました。

しかし【高波】に被害が集中したこと、また【高波】が本隊と距離をおいて航行していることもあり、その間に【長波】はじめ7隻の駆逐艦は揚陸寸前という全然戦える状態でなかったところから、しっかりと戦闘準備に入ることができました。
奇襲されるはずだったこの戦いは、奇襲させなかったという【高波】の存在がこの海戦の勝利のポイントであることは間違いありません。

この後各艦は行動がばらけてしまうのですが、各々のタイミングと配置で魚雷を発射。
速く、見つかりにくい酸素魚雷は米艦隊に四方から襲いかかり、まず先頭の【ミネアポリス】の艦首に魚雷が1本命中。
舌を突き出したような形で艦首がだらんと垂れ下がり、【ミネアポリス】は慌てて撤退を開始します。

【ミネアポリス】が急に速度を落としたため、後続の【米ニューオーリンズ級重巡洋艦 ニューオーリンズ】はすぐさま右に舵を切って【ミネアポリス】を回避しようとしました。
ところが次の瞬間、今度は【ニューオーリンズ】にも魚雷が命中し、1番砲塔の弾薬庫の誘爆が原因で艦首が艦橋の目の前まで完全にもぎ取られてしまいました。
この海戦の魚雷は誰のものが誰に命中したか把握が困難なのですが、最初に魚雷を放っているのが【高波】で、最初に魚雷を受けているのが【ミネアポリス】【ニューオーリンズ】ということから、恐らくこの2隻の被害は【高波】の魚雷によるものだろうと推定されています。

この後【米ペンサコーラ級重巡洋艦 ペンサコーラ】【米ノーザンプトン級重巡洋艦 ノーザンプトン】も被雷し、威張って出てきた重巡4隻が全艦返り討ちにあいました。
その他の艦も混乱の最中でとても戦闘を続行できる状況ではなく、残された【米ブルックリン級軽巡洋艦 ホノルル】や駆逐艦は次々に離脱します。

重巡2隻を食い荒らした【高波】
かつて「バリ島沖海戦」で大破した【満潮】の指揮を執っていた小倉正身艦長は、その戦訓からも防火対策に熱心だったこともあり、50発もの砲弾を受け、ボロボロの状態ながらも【高波】はまだ炎上することなく留まっていました。
浸水も微々たるものだったのですが、船が動かないので脱出するにはカッターや搭載してきた【小発】を使うしかありません。
ところがそれらの艦載艇は全部砲戦の中で破損しており、沈まずに使える状態ではなく、【高波】は使えそうな艦載艇の修理と筏づくりを急ぎました。

やがて【高波】の救助のために【黒潮、親潮】がやってきました。
2隻が目の当たりにした【高波】からは、元の姿に戻る未来はとても思い浮かびませんでした。
2隻は早速【高波】乗員の救助を開始します。

しかし2隻が救助作業をしていたところに、新しい船の姿が確認できました。
この時敵には【米ブルックリン級軽巡洋艦 ホノルル】が健在だったので、もしこちらに来る船が無事な巡洋艦だったらひとたまりもありません。
横付けで救助を進めようとしていた【黒潮、親潮】ですが、涙をのんで【高波】から離れます。
実際にこの時に【高波】に近づいてきたのは、最初は駆逐艦でしたが、後に【ペンサコーラ】が近くを通り過ぎたものと想定されています。
もし敵に【高波】が奪われることがあってはならんということで、2隻が逃げ出てしまったにもかかわらず【高波】はここでキングストン弁が抜かれています。

いずれにしても沈む運命となった【高波】からは生存者が次々に海に飛び込んでいきましたが、巡洋艦からは【高波】に何もされませんでした。
【ペンサコーラ】だと仮定して、【ペンサコーラ】は被雷の影響で足を引きずるように艦尾が多少沈下、そして主砲電路がオシャカになっていたので、砲撃どころではなかったのでしょう。
ただこの後【高波】には魚雷が命中したと言われています。
その魚雷の爆発か、はたまた自身の弾薬が誘爆したのか定かではありませんが、【高波】は爆発の末に33名の命しか助かりませんでした。
沈没時の爆発でも多くの人が亡くなりました。

助かった33名も、半日以上泳いだり休んだりを繰り返して命からがらガダルカナルまで辿り着くという、体力も精神力も飢える寸前でした。

【高波】の生涯はわずか92日と短い命ではありますが、「ルンガ沖夜戦」の勝利が大きな殊勲として今も輝き続けています。

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