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雪風【陽炎型駆逐艦 八番艦】その2

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強運艦の片鱗 危険な輸送を耐え凌ぐ

明けて昭和18年/1943年1月、【雪風】は再びトラック島へ帰ってくるのですが、この時にはもう日本はガダルカナルの放棄を決定しており、作戦は攻めから撤退へと変更されていました。
【雪風】達駆逐艦の任務はガダルカナルに残された仲間たちをできるだけ多く救出すること。
そのために1ヶ月の準備期間を置き、また連合軍を怖気づかせる欺瞞作戦を取り、2月1日から「ガダルカナル島撤収作戦(ケ号作戦)」が始まりました。

ヨロヨロボロボロガリガリの兵士達が、亡霊のような動きで舟艇に乗り込んで、もしくは引っ張られていきます。
【雪風】は3回の「ケ号作戦」全てに参加していますが、いずれもエスペランスではなくカミンボが目的地です。
3回目の7日の作戦では、2回の大規模輸送を目にしてアメリカも感づいたのではないかと連合艦隊が及び腰になり、駆逐艦ではなく【大発動艇】だけでやろうと提案したのですが、陸軍だけでなく【雪風】艦長の菅間良吉中佐【浜風】艦長の上井宏少佐もこれに反対。
他の駆逐艦乗りも同意見で、予定通り3回目も駆逐艦による大脱出作戦が実行されました。

そして「ケ号作戦」は敵も舌を巻くほどの大成功を収め、【巻雲】だけが沈没したものの、地獄の餓島から離脱することができたのです。

大量の戦死者と、生き残っても戦争どころか普段通りの生活すらままならなくなってしまう人を続出させた「ガダルカナル島の戦い」は終わりましたが、「ニューギニア島の戦い」は終わっていません。
こちらも「ポートモレスビー作戦」の失敗以後一進一退の状態でしたが、ガダルカナル島から撤退した今、戦力をここに集中させて本格的な反攻を期す事になりました。

しかしポートモレスビーの攻略ができていないということは、これまた制空権が取れていないということです。
そんな場所への輸送がどれだけ危険かは半年近く経験してきたわけですが、一番輸送が必要なラエに向かうには、その敵制空権内を、しかも細い海峡を通過するしか方法がありません。
マダンとウェワクへの輸送もあったのですが、ここからラエまではめちゃくちゃ遠いので、ラエ輸送なしでポートモレスビー奪還はできないと判断され、【雪風】は運悪くダントツに危険なラエ輸送組に組み込まれてしまったのです。

輸送船8隻、駆逐艦8隻と、編成だけ見ればマンツーマンの護衛ですからまぁまぁの数だと言えます。
ですが数が揃っても輸送船は空襲には敵いっこないし、そもそもめちゃくちゃ遅いから少し前まで鼠輸送を強いられたわけです。
28日に16隻はラバウルを出撃し、地獄の門を開きました。

一応ラビやポートモレスビーへの空襲と船団直掩という形で航空支援もあるにはあったのですが、全然足りないのはやる前からわかっていて、気休めでしかありませんでした。

3月2日には【B-17】の爆撃によって【旭盛丸】が沈没。
【雪風】【朝雲】とともに夜の海を走り、一足先に第五十一師団の一部と救助した【旭盛丸】に乗っていた兵士達(819or918名か)を送り届けますが、船団は常に【PBY】に触接されていて、明日は血の雨が降るだろうことは容易に想像できました。

3日、今日はビスマルク海峡を通過します。
上空には【零戦】がいます。
駆逐艦や輸送船の機銃はあてにならないので、彼らにすがるしかありません。

【雪風】【朝雲】は揚陸を終えて船団に合流。
ところがビスマルク海峡を通過する前に大殺戮が始まります。

連合軍の奇策はなんといっても反跳爆撃でした。
水平爆撃、急降下爆撃が爆撃としては主流でしたが、ここにきてアメリカは水切り石の要領で爆弾を海面に跳ねさせて横から爆弾を叩きつける新しい爆撃方法を考案。
命中率が低い水平爆撃、技術が伴う急降下爆撃に比べ、反跳爆撃は機銃による危険は伴いますが比較的簡単な爆撃方法でした。

ですが相手は輸送船、圧倒的に低リスクでした。
この新しい爆撃方法が加わったことで、輸送部隊は右往左往。
爆撃機が雷撃機になったようなもので、しかも不発だったらセーフ、せいぜい穴が空くだけの魚雷とは違い、反跳爆撃は不発であってもハンマーのような破壊力が残りますから、当たれば確実に大ダメージです。

【零戦】は先に目についた、水平爆撃用の【B-17】への対処を進めていたため、反跳爆撃を行った低空飛行の爆撃機はほとんどフリーの状態であり(そもそも反跳爆撃が初めての経験のため、そんな低空から航空機が現れるなんて想定していない)、「ビスマルク海海戦」は当初の懸念通り、いやそれ以上の大損害を出してしまいます。
なにせ輸送船全滅、駆逐艦4隻沈没ですから、どう考えても作戦側の問題です。
脆い輸送船は被弾爆撃によって大穴を開けたり真っ二つになったりし、そしてそこから大量の豆粒のような乗員が投げ出されていきます。

第十六駆逐隊では哀れ【時津風】が犠牲となっていて、輸送は結局【雪風、朝雲】に乗っていた幸運な兵士達と、皮肉にも最初の犠牲となった【旭盛丸】の一部の乗員だけがラエへの上陸を果たしただけでした。
【雪風】は沈没した【時津風】の乗員を救助、さらに【旭盛丸】沈没後にラバウルから出動していた【初雪】に乗員を引き渡した後は、【敷波】【朝雲】とともに【荒潮】の救助のために同海域に引き返しています。
本来であれば海上に投げ出された人たちも救出したかったのですが、潮の流れが早かったため、人っ子一人見つけられませんでした。

最悪最低の結末となった「ビスマルク海海戦」
【雪風】【朝雲、敷波】とともにカビエン経由でラバウルに戻り(【初雪】【浦波】はラバウル直行)、そこで【山彦丸】の整備を受けていました。
ところが地獄の光景がまだ脳裏に焼き付いて離れないうちに、また沈没の報告が【雪風】に届きます。
今度は「ビラ・スタンモーア夜戦」【村雨】【峯雲】が闇の中からの砲撃によってやられてしまったのです。
2隻はコロンバンガラ島への輸送の最中だったので、【雪風】は整備を打ち切り、2回に渡ってコロンバンガラへの輸送を行っています。

3月4月はニューギニアへの輸送が続きましたが、5月に入って俄に北が騒がしくなってきました。
あんまり占領する意味がなかったアッツ島、キスカ島への攻撃が激化してきたのです。
12日に呉に戻ってきた【雪風】は、早速北方へ向かう準備を進めます。

ところがおちおちしているうちに「アッツ島の戦い」が終わってしまいます。
支援もクソもなくなったために北への出撃は一旦取り消しとなり、この間に25mm機銃の増設と、新型装備となる逆探を搭載されました。
今後、沈没しない上に戦果を残してくれる【雪風】は優先的に新型兵装を搭載されるようになります。
これも【雪風】が最後まで戦いぬくことができた要因でしょう。

結局【雪風】「キスカ島撤退作戦(ケ号作戦)」に参加することはなく、北への任務を行わずにつかの間の休息を経て再び南方へ進出。

その後トラックやラバウルへの輸送を実施した後、今度はコロンバンガラ島への輸送が始まります。
この頃のコロンバンガラは「ニュージョージア島の戦い」が始まったことで重要な中継地点となり、7月9日には【雪風】【鳥海】が「ニュージョージア島の戦い」のためにコロンバンガラにいる兵士達を引き揚げます。

続いてこの引き揚げた分の穴埋めのために新しい部隊と物資をラバウルから輸送することになり、12日に二水戦の指揮で【雪風】は再びコロンバンガラへ向かいます。
しかし前回の輸送で攻撃を受けなかったからといって常にフリーで通してくれるほど敵も甘くなく、今度は輸送隊が発見されてアメリカも第36.1任務群が出動しました。

【雪風】が装備したばかりの逆探は、水上偵察機のレーダー照射を捉えていました。
しかし逆探は奇襲を避けることができるだけの装備ですから、敵の規模まではわかりません。
第36.1任務群は【米ブルックリン級軽巡洋艦 ホノルル】のレーダーで【雪風】達を発見し、こちらに接近してきます。
そして23時13分、「コロンバンガラ島沖海戦」が始まるのです。

第36.1任務群は、情報アドバンテージこそ取っていましたが、先に魚雷を放って混乱させ、その後砲撃で止めを刺すという「ベラ湾夜戦」のような戦いはしておらず、まだレーダーの有効的な使い方は共有されていませんでした。
ですが【ホノルル】【雪風】達を探知したのは、日本側が敵を視認する僅か9分前であり、そのアドバンテージを十分活用する時間的余裕もありませんでした。
結局両者は目視で存在を確認してから双方攻撃を開始しています。
その距離約6,000m。

【神通】が探照灯を照射して敵に砲撃を開始しますが、探照灯は敵からも攻撃の目印になってしまうので、【神通】は早速袋叩きにあってしまいました。
ですが【神通】が攻撃を一手に引き受けてくれているその隙に、【雪風】達は一撃で敵を葬り去る魚雷を各射点で発射します。
【雪風】は距離5,000m未満で魚雷を発射しましたが、1本の魚雷発射管が故障していて発射できていません。

魚雷発射後は次発装填のために戦場を離れるのですが、このためなおさら【神通】への攻撃は激化し、業火に焼かれてしまいます。
そうして圧勝じゃんと高を括っていた第36.1任務群は、【新(英連邦)リアンダー級軽巡洋艦 リアンダー】がいきなり爆発を起こしたことで面食らいます。
【雪風】達の魚雷が命中したのです。

突然の反撃に敵は3隻の駆逐艦をよこして追いかけますが、これらに見つかることなく、【雪風】達は魚雷を再び携えて戦場に戻ってきました。
すでに【神通】からの連絡は途絶えていたので、指揮は【雪風】搭乗の第十六駆逐隊司令島居威美大佐が担当。
味方3隻の駆逐艦が戻ってきたのかもしれないと思って攻撃を躊躇っている敵を尻目に、【雪風】達はどんどん接近します。

そして至近距離まで迫ったところで再び魚雷を発射。
ようやく敵だと判断した第36.1任務群は、急いで砲撃を開始。
先頭だった【雪風】に砲弾が次々に飛んできますが、不思議なほど当たりません。
【浜風】艦長の上井少佐は、この時何度も「あっ」と思ったのですが、林立した水柱から常に【雪風】が元気な姿で飛び出してくるのを目撃しています。[5-P86]

こちらへの命中弾がないのとは裏腹に、先に放った魚雷は次から次へと命中し、爆発が起こるたびに駆逐艦からは歓声が上がります。
これぞ駆逐艦の本懐、結果的に敵軽巡洋艦3隻大破、駆逐艦2隻大破、1隻撃沈という戦果を叩き出したのです。
また、この海戦では本来の目的である上陸作戦も成功させ、鬼神【神通】を失ったものの、大成功を収めた作戦となりました。

とはいえ【神通】の損失は船1隻だけには留まりませんでした。
数日前の「クラ湾夜戦」では【新月】と三水戦司令部が全滅し、そして「コロンバンガラ島沖海戦」では二水戦司令部も全滅したからです。
船がいても指揮系統が完全に壊れてしまったので、緊急の再編が求められ、四水戦をほとんどそのまま二水戦に持っていく荒療治が施されています。

大勝利に浮かれている暇はなく、【雪風】は1週間後にまたコロンバンガラ島への輸送を行っています。
三水戦が指揮を執ったこの作戦、輸送隊はコロンバンガラへの輸送を達成しましたが、水上艦の妨害を嫌って三水戦指揮の【雪風】達はクラ湾へ向かいました。
幸いここに敵は居らず、輸送隊と合流するために反転してブインに向かおうとしましたが、そこで【夕暮】【清波】が夜間爆撃によって沈没し、【熊野】も魚雷か反跳爆撃を受けて損傷。
輸送隊だった【水無月】【松風】も帰りに小破し、相変わらず空襲には苦しめられました。
今や海戦の勝利1回ぐらいでは敵の空襲には全く影響せず、むしろ水上戦で負けたら空襲に切り替えられるので、勝ちすぎることも問題になるという強烈なジレンマがありました。

8月末、上記の空襲によって損傷した【熊野】を護衛して呉へと戻った【雪風】は、2度目の改修を施されます。
25mm機銃を更に増備した【雪風】は、10月には【初春】【龍鳳】を護衛しながらシンガポールへ向かうことになりました。(【初春】同行ではない可能性もあるか?[3-P271][4-P214][NAVEL DATE BASE]
この回航ですが、呉で工事を受けていた【雪風】は横須賀に向かう必要がありましたが、その移動中に潮岬沖で潜水艦と一戦交えているようです(この後の護衛のときとごっちゃになってるかも)。[3-P271]

道中で2度も潜水艦に遭遇しており普通に危ないんですが、被害を受けることなく何とかシンガポールまで無事に到着しています。
その後【龍鳳】とともに日本に戻り、次は【伊良湖】をトラックまで護衛。
この時もトラック付近で敵潜と遭遇していて、もう敵に見つからずに移動することはできないのではないかと思えるほどでした。

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第十六駆消滅 雪風は味方を食ったのか

トラックからまた日本に戻る【雪風】ですが、ここでもまた潜水艦との戦いが発生したようです。
この時の対潜戦は敵を撃沈したと証言されていますが、残念ながら相手が誰かがわかっていません。[3-P275][4-P214]

呉に戻ると、線の細い菅間艦長から代わって大柄な寺内正道艦長(当時少佐)が就任。
【電】艦長時も自信満々の寺内艦長でしたが、こちらに来てからも「ワシが艦長をやってる間は、本艦はいかに敵艦や飛行機がやって来ても、絶対に沈むようなことはない」とそのキャラクターは不変でした。

破孔などの修理とともに、12月には早くも3回目の改装が始まりました。
2番砲塔が撤去されて代わりに25mm三連装機銃を2基設置。
これまでの2度の改修でも機銃は増設されていたため、駆逐艦としては「秋月型」に次ぐほどの対空装備を備えることになりました。
またついに前檣に13号対空電探、後檣に22号対水上電探が設置されました。

昭和19年/1944年1月16日、【雪風】【天津風】【千歳】と一緒にヒ31船団を護衛してシンガポールへ向かっていました。
あたりを警戒していると、浮上している潜水艦を発見。
ヒ31船団を狙っていたのは【米ガトー級潜水艦 レッドフィン】で、レーダーを駆使して船団に接近していました。

やってきた脅威に対して【天津風】が対処に向かいますが、【レッドフィン】はちょっと荒れた波の中にいつの間にか隠れてしまい、【天津風】【レッドフィン】を見つけることができませんでした。
とっとと見つけたいところですが、あまり船団から離れるのもそれはそれで良くないので、【天津風】はしばらく捜索した後に引き換えしていきました。
ところが完璧なタイミングで魚雷が【天津風】に飛び込んできて、1本が命中。
最終的に【天津風】は艦首を失い大破してしまいます。

しかし【雪風】【天津風】の救出に向かうことができませんでした。
このヒ31船団は護衛が【雪風、千歳】だけで、どれだけ捜索をしたのかは定かではありません。
船団を守る方が優先されたことで【天津風】は漂流してしまい、奇跡的に助かりはしましたが、これで第十六駆逐隊は【雪風】を除く3隻が全て戦力外となってしまいます(【初風】は前年11月の「ブーゲンビル島沖海戦」で沈没)。

肝心の船団は無事にシンガポールに到着しましたが、その後日本に戻るヒ32船団を護衛していたところ、佐伯からパラオへ向かうオ105船団が襲われて【樽島丸】が沈没、その生存者111名が乗った艀(はしけ)が漂流しているのを発見したので、【三宅】とともに急いで救助を行います。
【樽島丸】に関しては中途半端に長くなるので最後に説明。
これらの船団護衛を筆頭に、【雪風】はここからサイパンやグアム、パラオと輸送を頻繁に実施し、しかもそこには【千歳】【龍鳳】など空母も含まれるケースが大半で、かなり重要な輸送を担当しています。

3月31日、機能不全となった第十六駆逐隊は解隊。
さて【雪風】が次に組み込まれる駆逐隊はどこかというと、第十七駆逐隊でした。
第十七駆逐隊は欠損もなく、4隻が編成当初から顕在の駆逐隊です。
それなのにどうして異例の5隻目として編入されたのかはわかりませんが、この3月末時点で「甲型駆逐艦」を中心とした駆逐隊は第十七駆逐隊と第四駆逐隊、第十駆逐隊ぐらいでした。
第四駆逐隊も第十駆逐隊も欠員があり、ここに入る不都合はないはずなのですが、何故か【雪風】は5隻編成になってでも第十七駆逐隊に加わったのです。

しかし【谷風】の乗員が【雪風】は十六駆で僚艦を全部食い尽くした」と漏らすなど、【雪風】の編入は歓迎されない向きもあり、自身の駆逐隊でも犠牲が出るのではないかと恐怖していました。
そのような不吉な予感は別として、まず5隻編成の扱いが誰も経験したことがないので、連携に対する不安があったのは間違いないでしょう。

5月に入って日本は連合艦隊は続々とタウイタウイ入りします。
年明けからマリアナ諸島が危ないことはわかっていて、輸送を強化するなどしていましたが、ここに来て日本はマリアナ諸島やカロリンを餌に敵艦隊を一気に攻撃する「あ号作戦」を策定し、その準備のために久しぶりに戦艦と空母が揃い踏みで戦闘準備にはいったのです。
タウイタウイは石油が採れるタラカン島からまぁまぁ近いフィリピン領内だったので、大艦隊が集まるにはちょうどよい場所でした。

ですがタウイタウイの周りには潜水艦が点在していて、タウイタウイに集まったことで逆に取り囲まれてしまいます。
お陰で対潜哨戒は欠かせない上、不用意に湾外に出ることができないので、特に訓練不足のまま招集されたパイロットの底上げがかなり不十分でした。
駆逐艦は拠点を移動するわけでもないのに朝から晩まで働き通しでした。

一方で対潜哨戒のほうも散々で、潜水艦を一度も攻撃できずに逆にこちらは4隻も沈没しています。
そしてそのうちの1隻が【谷風】でした。
【谷風】【沖波】達と対潜哨戒のために沖合に出ていたのですが、それを見つけた【米ガトー級潜水艦 ハーダー】が忍び寄り、至近距離で側面から魚雷を発射。
2本の魚雷が命中した【谷風】は大爆発を起こして沈没。
第十七駆逐隊初の喪失艦を出してしまったのです。

話が前後しますが、5月14日は【電】がセレベス海で【米ガトー級潜水艦 ボーンフィッシュ】の雷撃を受けて沈没し、【雪風】はその救助に向かったものの、救助はできていません。
さらに22日、【雪風】【千歳】の航空訓練の護衛、そして対潜哨戒を終えてタウイタウイに戻ってきた時に触礁してしまい、スクリューを損傷させてしまいます。
戻ってきた【雪風】【大和】【武蔵】の工作員の力を借りて応急修理を受けています。
しかし完全な修理はできず、速度は最大26ないし28ノットにまで落ちてしまい(これ以上出すとかなり振動が激しくなり、足を引きずるような動きになった)、この後発生する「マリアナ沖海戦」では機動部隊護衛から第二補給部隊の護衛に回り、【卯月】とともに戦況を影から見守ることになりました。

その「マリアナ沖海戦」ですが、6月19日、20日と2日に渡ってアメリカ機動部隊と激突。
後方支援に回っていた【雪風】の戦果と言えば、開戦前に追跡してきた【米ガトー級潜水艦 カヴァラ】【浦風】と一緒に追い払ったことぐらいですが、もしここで【カヴァラ】を仕留めていたら、【翔鶴】の沈没がなかった可能性もあります。

その【カヴァラ】の活躍もあって、「マリアナ沖海戦」はアメリカの圧勝。
後方にいた【雪風】には詳しい情報は入ってきませんが、「旗艦を【大鳳】から【羽黒】に移す」という電報が入ると、「ああ、「ミッドウェー海戦」と同じだ」と、皆すべてを察したようです(その後【瑞鶴】に移動)。
20日、2隻の空母を失ったことで、部隊はいったん撤退し夜戦にすべてを賭けるつもりで、補給部隊には前進して本隊と合流するように命令が入ります。
しかし下がる日本をアメリカは見逃さず、次々に艦載機が後を追ってきました。

機動部隊は当然ながら、【雪風】たちが護衛している補給部隊も空襲を受けます。
この時、夜戦に向けて探照灯にも担当者が就いていましたが、【雪風】はこの探照灯で奇策を繰り出しました。
機銃が絶えず火を噴き、襲いかかる敵機に反抗しますが、ついに【玄洋丸】が至近弾により機関損傷、速度がどんどん落ち始めました。
これはいかん、数を減らさねば輸送船がやられると、【雪風】はまだ日も明るいのに自艦に向かってくる敵機に対して、いきなり探照灯を照射し始めました。
突然目潰しをされた敵機は思わず旋回、前が見れないので変な動きで離れていきました。
オタオタする敵に対して【雪風】は機銃を撃ち込み、連続で2機を、最終的に3機撃を墜しています。

しかし輸送船をすべて守ることはできず、【速吸】は被弾するも行動できましたが、【清洋丸】が大炎上し航行不能。
また至近弾を受けた【玄洋丸】も、機関損傷が酷く航行不能となってしまいました。
【あづさ丸】による曳航も考えられましたが、夜とは言え長居をしてさらに犠牲を出してしまうのは許されませんでした。

残念ながら【玄洋丸】【清洋丸】とともに【雪風、卯月】に雷撃(【玄洋丸】は砲撃?)処分されます。
補給部隊は本隊に前進を求められて給油を行っているうちに敵襲を受けたのですが、本隊が先に逃げたので、呼ばれてやってきたら置いてけぼりにされたという、成仏できなさそうな仕打ちを受けています。
「あ号作戦だけに、あっ!と言っているうちに、空母が沈んであっけなく終わってしまった。」とは艦長談です。[3-P309]

ついに突破された絶対国防圏。
7月、再び呉へと戻った【雪風】はスクリューの交換と一緒にまたもや兵装強化をされることになります。
この改装でさらに25mm単装機銃10挺、13mm単装機銃4挺が増備されました。
ですが機銃を100挺揃えたところで航空機1機にもなりません。
必要なのはどう考えても飛行機で、もはや船すら飛行機と交換できるのならすぐにでも交換したいぐらいの戦況です。
装備がどれほど充実しても、焼け石に水でした。

昭和19年/1944年8月28日時点の兵装
主 砲 50口径12.7cm連装砲 2基4門
魚 雷 61cm四連装魚雷発射管 2基8門
機 銃 25mm三連装機銃 4基12挺
25mm連装機銃 1基2挺
25mm単装機銃 10基10挺
13mm単装機銃 4基4挺
電 探 22号対水上電探 1基
13号対空電探 1基

出典:日本駆逐艦物語 著:福井静夫 株式会社光人社 1993年

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参考資料

Wikipedia
艦これ- 攻略 Wiki
NAVEL DATE BASE
大日本帝國海軍 特設艦船 DATA BASE
[1]戦争アーカイブ「特攻兵器の目標艦に」
[2]BS1スペシャル 少年たちの連合艦隊~”幸運艦”雪風の戦争~
[3]『雪風ハ沈マズ』強運駆逐艦 栄光の生涯 著:豊田穣 光人社
[4]奇跡の駆逐艦「雪風」太平洋戦争を戦い抜いた不沈の航跡 著:立石優 PHP文庫
[5]駆逐艦雪風 誇り高き不沈艦の生涯 著:永富映次郎 出版共同社