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曙【綾波型駆逐艦 八番艦】
Akebono【Ayanami-class destroyer】

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起工日昭和4年/1929年10月25日
進水日昭和5年/1930年11月7日
竣工日昭和6年/1931年7月31日
退役日
(沈没)
昭和19年/1944年11月13日
マニラ空襲
建 造藤永田造船所
基準排水量1,680t
垂線間長112.00m
全 幅10.36m
最大速度38.0ノット
馬 力50,000馬力
主 砲50口径12.7cm連装砲 3基6門
魚 雷61cm三連装魚雷発射管 3基9門
機 銃7.7mm単装機銃 2基2挺
缶・主機ロ号艦本式ボイラー 4基
艦本式ギアード・タービン 2基2軸

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不幸が降り注ぐ中、必死に戦い続けた曙

【曙】は竣工後に【朧】【潮】とともに第七駆逐隊を編成。
第七駆逐隊は昭和10年/1935年9月26日に発生した「第四艦隊事件」の当事者で、【曙】はこの台風で艦尾に亀裂が入っています。

昭和15年/1940年4月15日に【漣】が第七駆逐隊に参加。
ですが昭和16年/1941年9月1日に【朧】【漣】が第七駆逐隊を離脱。
この年の7月から第七駆逐隊は第一航空戦隊に編入されていたのですが、半分の2隻が第五航空戦隊に入ることになったのです。
部署は違えど、この4隻はいずれも機動部隊護衛という大切な任務を拝命したわけです。
が、【漣】だけは1ヶ月もしないうちに第七駆逐隊に戻っています。
代わりに建造されたばかりの【秋雲】が五航戦の護衛に入りました。

ところがこの名誉ある任務、片道6,600kmの超長旅に耐えうる航続距離が絶対条件であった「真珠湾攻撃」を前に早くも対応できなくなってしまいます。
当然途中まで補給船がついてきますが、「綾波型」の航続距離は約9,200km。
復路の半分が燃料不足になる計算です。
しかもこれはカタログスペックですから、10年も使っていれば当然これよりも実際の航続距離はもっと落ちます。
そのため最新の「甲型駆逐艦」が空母に随伴し、第七駆逐隊は機動部隊の雄姿を見ることはできませんでした。

加えて【曙】は12月1日に曳索がスクリューに巻き付いてしまうという事故を起こしていて、7日に修理を終えてから急いで戦艦部隊に加わり、翌日父島へ向かっています。
不運は続き、この帰り道で遭遇した大時化の中で【朧】は艦隊とはぐれてしまい、奇襲作戦の為無線が使えない中自力で日本に帰り着いています。

年が明けて昭和17年/1942年から第七駆逐隊は南方部隊航空部隊に所属。
「真珠湾攻撃」こそ参加できませんでしたが、役割としては変わらず空母護衛でした。
「蘭印作戦」の支援をするために空母を離れて行動することも多く、機動部隊による空襲であったり、上陸部隊の船団護衛であったりと忙しい毎日を送っていました。

日本の占領目標としても非常に大きな島の一つであるジャワ島。
ここまでの日本の活躍で連合軍にジャワ島を防衛するだけの海軍戦力は残っておらず、ABDA司令部は数合わせの艦隊で対抗するしかありませんでした。
この艦隊に勝負を挑んだのが、第五戦隊を中心とした第三艦隊です。
2月27日、「スラバヤ沖海戦」が勃発しました。

【曙】は初日の海戦には不参加。
28日に拿捕された【蘭病院船 オプテンノール】の護送を【天津風】から引き継ぐように言われた【曙】は、3月1日、艦隊から外れて報告を受けた方向に向かって進んでいました。
【オプテンノール】の臨検拿捕に関する情報は複数ありますので、これが事実とは限りません。
やがて30km近く先に艦影を認めた【曙】は、それに向かって停止命令を出します。
ところがこれは先日の砲撃戦で被弾しながらも逃れてきた【英ヨーク級重巡洋艦 エクセター】らの一行で、いくら手負いとは言え数も攻撃力も圧倒的に上回る相手に遭遇したものですから急いで救援を求めました。
ちなみに【曙】には周辺に敵艦隊の存在を警戒するようにという話は全く降りていませんでした。

逆に【エクセター】からしたら劣勢のこの戦いで敵に打撃を与える絶好の機会であると同時に、ここで【曙】を仕留めておかなければ応援が来てしまいますから、何が何でも仕留めたい相手でした。
【曙】は砲撃しながら第五戦隊の到来を待つのですが、逆に第三艦隊はそのまま【曙】に対して「こっちまでおびき寄せろ」となかなか酷い命令を下します。
そんな挑発的な行動をとれる余裕が全くない【曙】は、どかどか砲弾が飛んでくる中、2番、3番砲を放ちながらフルスロットルで逃げ出します。
そんな中、ようやく【妙高】【足柄】【雷】が到着し、何とか【曙】は間合いを取ることができました。

最終的に【那智】【羽黒】なども到着してABDA艦隊は逃げおおせた【米ノーザンプトン級重巡洋艦 ヒューストン】【豪パース級軽巡洋艦 パース】を除いて8隻が沈没。
戦果だけ見れば大大大勝利なのですが、弾薬空っぽ、魚雷は当たらない、時間かかりすぎと酷い内容で、海軍内でも結構問題になりました。
その中でもなぜか【曙】は敵に先制攻撃された挙句逃げ出したと散々な評価で、乗員は怒り心頭だったようです。
実際いったん距離を置いた【曙】【雷】とともに再び戦場に飛び込んでおり、全く戦おうとしなかったような評価は正当ではないと思います。
海戦後の敵兵救助も【雷】【電】ばかりが有名で、【曙】はもちろん他の船もちゃんと救助活動は行っています(でかい艦ほど救助者の扱いが雑だったのは艦の気質の差でしょうか)。

至近弾もあった【曙】はその後横須賀で修理を受けますが、休む暇はあまりませんでした。
戦争全体としては件のジャワ島攻略も成功しており順調そのもので、次の狙いとしてポートモレスビー攻略が掲げられていました。
第七駆逐隊は航空部隊の護衛としてこの攻略作戦に参加したわけですが、【翔鶴】を護衛中に「珊瑚海海戦」が始まりました。

前日の5月7日に【祥鳳】が一方的に爆撃されて沈没し、翌日には本隊である【翔鶴】【瑞鶴】【米ヨークタウン級航空母艦 ヨークタウン】【米レキシントン級航空母艦 レキシントン】と対決。
【瑞鶴】がスコールに逃げ込んだこともあって敵艦載機は【翔鶴】に殺到。
【翔鶴】は敵味方のどちらもが沈没したと思ってしまうほどの大火災と数多の傷を負いながらも戦場から離脱し、最終的に【レキシントン】を撃沈したことで「珊瑚海海戦」ははっきり勝利と言い切れないものの面目は立ちました。
ですがボッコボコにされた【翔鶴】はそれを守れなかったとして護衛にも非難が集まり、また【曙】が矢面に立たされます。
機銃が全然ない当時の兵装では、真の意味で空母の護衛ができる駆逐艦は1隻もありませんから、とんだとばっちりです。

「珊瑚海海戦」後の日本の勢いは衰えが見え始め、ポートモレスビーの攻略は結局後回しになってしまいます。
そこからアリューシャン列島とミッドウェー島の攻略に向けて動き始めた日本でしたが、【翔鶴】は当然のこと、【瑞鶴】も艦載機、パイロットの損耗の影響から即座に出撃できないという判断が下されます。
この影響もあってか、第七駆逐隊は北方部隊に編入され、今度は【龍驤】【隼鷹】の第四航空戦隊を護衛することになります。
なので空母4隻が悉く打ち破られた「ミッドウェー海戦」ではなく、北方の「AL作戦」のほうに参加しています。

戦況を大きく揺るがした大事件と言ってもいい「ミッドウェー海戦」の敗北。
北方部隊に編入されたのもつかの間、第七駆逐隊は今度は打って変わって南方に派遣されることになります。
7月14日第七駆逐隊は連合艦隊直属となり、その後は特に艦載機輸送の要であった「大鷹型」の輸送を多く任されることになります。
おかげで鼠輸送を始めとしたソロモン諸島での激しい鍔迫り合いにはほとんど参加することはなく、間接的な支援を黙々と続けていました。

この形は「ガダルカナル島の戦い」に敗北してからも基本的には変わらず、第七駆逐隊はいつも誰かをどこかに送り届ける任務を背負っていました。
そして幸いにも、大きな被害なく輸送は達成され続けました。
しかし彼女らは平穏でも、戦争は明らかに日本不利に進んでいました。
12月3日には護衛していた【冲鷹】【米サーゴ級潜水艦 セイルフィッシュ】の雷撃によって沈み、そして今度は第七駆逐隊にもその魔手が襲い掛かってきます。

昭和19年/1944年1月12日、【曙】【漣】とともに船団護衛のためにラバウルからパラオへ向けて出港します。
ですがその道中で【米ガトー級潜水艦 アルバコア】ら待ち伏せに合い、【漣】は3本もの魚雷を受けてあっという間に沈没。
89名が【曙】に救助されました。
その後【島風】【早波】とともにトラックへ向かう船団の護衛を行いましたが、【日本丸】【健洋丸】が相次いで撃沈され、結局無事にトラックに到着したのは【国洋丸】だけでした。

トラックから横須賀に向かった【曙】は、その後修理を受けて久々に北方海域に戻ることになりました(そもそも船団輸送が北方異動のついで)。
5月には大湊で行われた工事によって九三式魚雷を発射することが可能になりましたが、残念ながら【曙】はおろか当時の駆逐艦で魚雷が重要な兵装になっている船はほぼ皆無、昭和19年だと【竹】が放った乾坤一擲の一発ぐらいしか思い当たりません。
当然【曙】の九三式魚雷が活躍することも、1回だけしかありませんでした(後述)。

一方で絶対役立つ装備が整ったのが、「マリアナ沖海戦」後の改装工事です。

昭和19年/1944年8月20日時点の兵装
主 砲50口径12.7cm連装砲 2基4門
魚 雷61cm三連装魚雷発射管 3基9門
機 銃25mm三連装機銃 4基12挺
25mm連装機銃 1基2挺
25mm単装機銃 8基8挺
13mm連装機銃 2基4挺
13mm単装機銃 6基6挺
電 探22号対水上電探 1基
13号対空電探 1基

出典:日本駆逐艦物語 著:福井静夫 株式会社光人社 1993年

めちゃくちゃ強化された【曙】でしたが、正直この装備が必要だったのはまさに「マリアナ沖海戦」であって、無用とは言いませんが後の祭りでした。
残存艦はこのように軒並み戦訓に沿った強化を受けましたが、次の舞台が「レイテ沖海戦」ですからどうしようもありません。

【曙、潮】「レイテ沖海戦」では第五戦隊のある志摩艦隊に所属。
第五戦隊と言えば先述の通り「スラバヤ沖海戦」でまずい戦いをしでかした戦隊なのですが、実はその後も「アッツ島沖海戦」でほとんど同じ結果を招いており、ほとほと困った存在でした。
そんな志摩艦隊西村艦隊と合流してスリガオ海峡を突破する予定だったのですが、まずスコールの中で【阿武隈】【潮】に対して誤射。
更に西村艦隊のお出迎えを終えた魚雷艇が今度は志摩艦隊に襲い掛かり、ここで【阿武隈】が魚雷を受けて【潮】とともに引き返します。

スコールを突破した志摩艦隊でしたが、いろいろ連携が合わずに戦場に到着したころにはすでに西村艦隊が玉砕しているところでした。
志摩艦隊西村艦隊を援護するために北上を続けましたが、今度はゆっくりと動いていることに気付かなかった【最上】【那智】が衝突。
敵と戦う前に志摩艦隊は大混乱に陥ります。
しかも西村艦隊からの通信はなし、敵の情報も不明のままとあって、志摩艦隊は全く何もできずに撤退を始めました。

この時まだ動ける【最上】には【曙】が護衛につくことになりました。
いつぞやの「ミッドウェー海戦」の時のような、ボロボロになりながらも身を引きずって戦場から離れようとする【最上】
レーダー射撃が後方から更に襲い掛かりますが、【最上】は停止することなくひたすら南下。
ですが夜が明けたころ、今度はまるで日が昇るのと同じように航空機が追撃してきました。

「ミッドウェー海戦」の時は【三隈】がある種身代わりのようになってくれましたが、今度はそのような存在もありません。
【最上】は更なる爆撃を受けてついに航行不能となります。
炎が回り始めると誘爆の危険性がありますが、【曙】はそんな危険を顧みずに【最上】に横付けして乗員を救助。
救助が終わるまで沈まず耐え続けた【最上】は、最期は【曙】の酸素魚雷で自沈処分されました。
これが【曙】の酸素魚雷が使われた唯一の機会でした。

コロンまで逃げ帰った【曙】ですが、あまり日をあけずに再びレイテへ出撃することになります。
レイテ島への輸送、「多号作戦」の第二次輸送に参加することになったためです。
10月31日にマニラを出撃したこの第二次輸送は、護衛艦も充実していましたが何よりも航空支援があったため、揚陸中の空襲で【能登丸】が被弾沈没するものの揚陸もかなりの達成率をあげています。

しかし「多号作戦」が今後どんどん被害を積み重ねていくのと同じように、マニラの被害も無視できるものではなくなってきました。
まず第二次輸送自体がマニラ空襲の影響で2日延期されており、この空襲では【那智】が被弾によって艦首を失う被害を負っています。
それ以前も空襲がしょっちゅうあり、大小さまざまな艦船が損害に悩まされていました。
この危機を受けてマニラを奪取する船も出てきましたが、第二次輸送組がマニラに戻ってきたのは11月4日。
帰還のタイミングとしては最悪でした。

5日、大規模な空襲がまたまたマニラを襲いました。
ほぼ動けない状態だった【那智】はこの空襲で更に爆撃、雷撃を受け、最終的にはくの字に折れ曲がって沈没。
この時【那智】の救助に向かった【曙】も艦載機の獲物になってしまい、【曙】は2発の直撃弾を受けて航行不能に陥ります。
空襲を耐え抜いたあと、【曙】【潮】に曳航されてキャヴィデ港に繋留されて工作部による修理を受けることになりました。
この【曙】被弾の影響で参加予定だった「第四次多号作戦」には代わりに【秋霜】が参加しましたが、その【秋霜】も輸送中の被弾で艦首を切断してしまい、帰投後【曙】の隣で一緒に修理を受けています。

ですがマニラ空襲は収まる気配は全くありませんでした。
13日に再びやってきた航空機の空襲によって、修理を受けていた【曙、秋霜】も、残っていた【木曾】【初春】【沖波】も容赦なく攻撃されます。
さらに【秋霜】からも火の手が上がり、そしてその炎は【秋霜】の重油に引火して大爆発を起こしました。
やがて弾薬庫にも引火、何度も爆発する【秋霜】の炎に巻き込まれた【曙】もともに爆発しはじめました。
丸こげになった【曙】は浅瀬だったために大破着底しますが、どう見ても復旧は無理でした。

【秋霜】も被弾浸水によって右に転覆し、13日の空襲では上記5隻の艦艇が戦力から離脱。
戦後、【曙】【秋霜、木曾】とともに浮揚解体されています。

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